「近・現代文学研究会」 第94回(2007年3月) 


   中村真一郎 「雲のゆき来」  
 

 第九十四回「近・現代文学研究会」は、中村真一郎の「雲のゆき来」で、報告者は岩渕剛氏。参加者は報告者を含めて、九名。
〈報告の概要〉
 中村真一郎は、一九一八年生まれで、幼くして母を失い、母方の祖父母のもとで育った。開成中学時代に父が亡くなり、一高、東大と進むが、バイト、家庭教師で食いつなぎ、貧困の状態を経験していて、決してお坊ちゃん的な生活を送っていたわけではない。生涯、社会主義に並々ならぬ理解をもち続けた作家で、最後のインタビューは、「しんぶん赤旗」の北村隆志氏によるものであった。
 中村真一郎は、一日原稿用紙五枚書くことを、五十年間、日課とし、一七〇冊近くの著書を残している。
 「雲のゆき来」は、文学、芸術で、人間の複雑な感情をいかに表していくかを試みた小説で、中村文学のとっかかりになる作品である。
〈参加者からの感想〉
 「この小説は面白かった」「こういう小説は苦手」「中村は器用貧乏な作家で、ホントのところ何が言いたいのか伝わってこない」「博学多識をひけらかすような書き方はクサクもあり、イヤミでもあるが、非常に知識欲の強かった作家であったろうというのは、判る」
 岩渕氏は、手に入る限り中村真一郎の作品を購読(スゴイ!)しているほどの愛読者で、民主主義文学会において、この作家・作品の報告は、この人をおいていなかった。                         
 
  (井上通泰)     
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