「近・現代文学研究会」 第91回 (2006年9月) 


   金石範 「鴉の死」  
 
 第九十一回「近・現代文学研究会」は、九月二十一日、日本民主主義文学会の会議室で行われました。今回は金石範の「鴉の死」で、報告者は土屋俊郎氏。参加者は報告者を含めて九名でした。
 土屋氏は、年表年譜地図等の資料を準備されて、レジュメに沿って大筋次のように報告されました。
一、済州島と金石範──金石範の両親は、済州島民であったが、彼は大阪で生まれ、大阪で育った。
二、済州島「四・三事件」と金石範──一九四八年南朝鮮分断国家樹立に反対して、済州島民が武装蜂起した「四・三事件」当時、金石範は日本で生活していた。
三、金石範と「鴉の死」──「鴉の死」は、「四・三事件」を題材にした小説で、スパイの任務をおびた主人公の「孤独と苦悩と悲しみとを描くことと、彼が孤独をおしのけていく過程を描くことに主眼がおかれている」作品である。
 参加者から次のような感想、意見等が出されました。
 作品の世界に引き込まれて読んだ、民族的な、大きなテーマを描いていて、重い感じがする、他に類のない作品である。
 特に、感銘を受けなかった、鴉と鴉の死に象徴されるものがよく解らない。
 主人公をスパイに設定したことで、作品の世界とその問題を分かりにくくしているのではないか?
 「在日」の作家の民族問題についての引き裂かれた思いが、物事を率直に語れないスパイを設定したことによって、痛切な迫力をもって描かれている。
 
  (井上通泰)     
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