■ 「近・現代文学研究会」 第88回 (2006年3月) ■ |
中里 喜昭 「すかたん」 | ||
三月十六日(木)午後六時半から九時近くまで、第八十八回例会が文学会事務所で開かれ、九名が参加しました。奇数月の第三木曜日に開催されるこの研究会は、研究会とはいってもなごやかな雰囲気で進められています。明治の作家樋口一葉に始まり、時代を追ってきましたが、一昨年から、名作や問題作の多い一九六〇年代の作家を取り上げています。毎回たくさんのことを再認識したり発見したり、また作品への強い関心をかきたててくれます。 今回は、岩渕剛さんが、中里喜昭の「すかたん」(一九六五年十二月『民主文学』創刊号掲載)について、次のような要旨で報告しました。 中里は、一九三六年に生まれ、中学卒業後、三菱重工長崎造船所に就職、その社内学校に通う。文学の道に進むことに大きな影響を与えたのは、その頃の闘病体験であった。「すかたん」までの初期作品の流れは、そのモチーフから、一方に「地金どろぼう」「船の歪み」があり、他方に「解体」「分岐」がある。 「すかたん」は、造船所の労働者が分断されている実態を重層的にとらえて、ダイナミックな世界を描きだしている。当時の政治的課題としての統一戦線や、職場の現状に即した労働運動の課題などが背景にあるが、中里は、労働者像を豊かに描写することで、その課題に答えようとした。 討論では、鮮やかなイメージで労働現場が捉えられていること、労働者の間に幾重もの差別がつくりだされている実態が巧みに描かれているという高い評価が語られる一方、わかりにくさを指摘する声もありました。 また、優れた作品を発表し、文学同盟(当時)の事務局長を務めながら、文学運動を守ることができず退会したことは残念であり、その後にみるべき作品がないことも考えさせられるとの発言があり、過去の文学運動の混乱期を振り返ることにもなりました。 |
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(玉造 修) |
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