■■ 「批評を考える会」 <2006年4月> ■■

 

 『小説の心、批評の目』より、小林昭「文学の批評精神──状況を生きる主体として」をテーマとした批評を考える会は、四月二十二日土曜日の午後七時から開かれ、十五名の参加を得て活発な意見が交換された。
 報告者の牛久保建男氏は小林氏の論文について、文学には批評精神が重要であるという主旨を、明治以降の文学史をたどりながら短い紙数に凝縮して的確にあらわしているすぐれたものであると述べた上で、近代的自我とは何かという点を追求していった。小説の商品化、量産化が加速している今日、文学の批評精神をつかみなおす必要がある。批評とは対象を見る目であり、その目を支える思想を鍛えることが肝心。民主文学会の作家・批評家は自分の目は本当に正しいかと、もう一度考えてみることが大切だと結んだ。
 参加者の一人、歌壇の実作者であり、批評家でもある水野昌雄氏。短歌も現代の風俗をうまく切り取って機知に富んだ気の利いた言い回しの作風が多くなっており、必要なのは「時代を切りひらく展望」だといいたいが、批評のことば(言い方)にはいろいろと気をつかうという発言にはジャンルを越えて共感するものがあった。「自分の書く小説には批評の目が働いているのだろうか」という実作者の悩みが吐露されると、「過去を描く場合の批評精神はどのようにしたら発揮されるのか」という実作上の問題も飛び出した。参加者それぞれがテーマをわが身に引き寄せて考えあうことができた充実感あふれる会となった。                                    
(堺田鶴子)

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