内心の自由、言論・表現の自由を奪う「共謀罪」法案の廃案を求める
 
 いま、特別国会において「共謀罪新設法案」が継続審議にされようとしている。私たちは、何かを二人以上で話し合っただけでも処罰の対象となる本法案が、人々の内心の自由、言論・表現の自由を奪い、戦前、戦時下の暗黒社会を再び生み出す道につながるものとして、強く反対するものである。
 「共謀罪」の新設は、「国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約」の批准にともなうものとされている。しかしながら本条約には、「自国の国内法の基本原則に従って必要な措置をとる」との明記があるにも関わらず、「共謀罪」は、実行行為に着手する以前の予備行為自体を処罰の対象としており、テロや国際犯罪の抑制を目的とした趣旨の逸脱ばかりか、「法益侵害の意思だけでは処罰しない」というわが国の刑法の基本原則に真っ向から反し市民生活の隅々にまで処罰範囲を不当に拡大しようとする、言論・表現の自由を侵害する重大な悪法と言わざるをえない。
 「共謀罪」における共謀行為の捜査は、メールなどのやりとりも対象となるため、盗聴法の適用範囲の拡大により、警察官の目と耳が一般市民の生活のあらゆる部分に向けられ、監視・管理社会が本「共謀罪」と一体となって進行していく恐怖が容易にうかがえるものである。
 私たち表現による文学創造に携わる者にとって、絶対主義的天皇制下の治安維持法により小林多喜二らが命を絶たれた過去の歴史を想起せずにはいられない。「共謀罪」の新設は、治安の強化による戦争のための総動員体制にも連動し、異質な人間を排除しようとする運動につながる恐れが大いに指摘できる。
 私たちは、自由に考え議論する場が失われ、この国の活力を奪うばかりか自由と民主主義社会の死にいたる道をつくろうとする、「共謀罪」の制定に強く反対し廃案を求めるものである。
  
                                   2005年10月23日
日本民主主義文学会常任幹事会  

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