【声明】 改憲策動と「国民投票法案」の制定に反対する |
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戦後六十年、被爆六十年をむかえた本年、この国の進路は重大な危機に直面している。 先の総選挙で「圧勝」した小泉自民党政権は、あらゆる面で国民に犠牲を強いる一方で、大資本優遇、アメリカ追随の政策をいっそう強めている。医療制度の改悪、さらなる増税、雇用不安、また核戦略を中心とした在日米軍基地再編強化の受け入れ、イラク派兵の期間延長や、なんら安全の保証のない米国産牛肉の輸入再開等々、それはとどまる所を知らない。 さらに重大なことは、憲法第九条を眼目とする憲法改定に向けて、「国民投票法案」の策定や教育基本法改悪などの歴史を逆転させる動きが、民主党の積極的な協力のもとに急速に進められていることである。しかも権力への監視役を果たすべきマスメディアの多くが本来の役割を放棄し、むしろ棹さしているという状況が、社会のゆがみをいっそう深刻にし、逼塞感を生み出す土壌となっている。それは一九三〇年代、戦争に雪崩れ込んでいった、この国の歴史を想起させるものである。 こうした流れに抗して、いま国民主権と平和、民主主義をまもる広範な人々のたたかいもまた広がっている。とりわけ昨年六月、大江健三郎、奥平康弘、小田実ら九氏が、「日本国憲法をまもるという一点で手をつなぎ」、「『改憲』のくわだてを阻むため」の行動を呼びかけた『九条の会』は、全国の地域、職場、文化分野などすでに三千六百を超す『会』に発展し、広がり続けている。さまざまな形でこれらに参加している私たちもまた、その運動を通して積極的役割を果たしていかなければならない。 戦後の民主主義文学運動は、戦時中の日本文学が侵略戦争に加担したことへの、痛切な反省を出発点にもつ。民主主義文学運動のみならず戦後の日本文学は、侵略戦争の実相を追求しつつ、文学創造として表現することを重要な主題のひとつとしてきた。 私たちは、この歴史の教訓を踏まえ、「戦争をする国」への改憲策動と「国民投票法案」の制定に反対し、日本国憲法の平和と民主主義の精神を守るために全力をつくすものである。 2005年12月18日
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