日本民主主義文学会第22回大会 「大会宣言」

 わたしたちは、憲法を改定し、アメリカとともに戦争をする国にしようとする勢力によって「改憲手続き法」が成立させられようとする最中に、日本民主主義文学会第22回大会を開催しました。
 改憲勢力は、「戦後レジーム」からの脱却をめざし、戦前の天皇中心の体制を「美しい国」として理想化し、そこへの回帰をたくらんでいます。それは過去の戦争を美化することによって再び戦争へと人びとをかりたてるものでもあり、侵略戦争否定のもとに築きあげられた現在の国際秩序を否定することでもあります。侵略戦争に反対したプロレタリア文学運動の伝統をひきつぎ、戦後の平和と民主主義をまもり発展させる運動の一翼を担ってきたわたしたちは、創造と批評の両面で、この傾向に対してたちむかう決意を表明します。
 現在の社会状況のもとで、人びとのくらしには、危機的な状況がひろがっています。非正規雇用の増大による生活不安は、「ワーキングプア」などのことばも生み出し、生きること自体がおびやかされるようになっています。教育基本法の改悪によって、子どもたちは「国を愛すること」を強制的に教えこまれ、また格差と選別がさらに教育の場に持ちこまれようとしています。
 そのような、人間の尊厳をふみにじる動きの中で、現実の矛盾をみつめ、その中の人びとの生きる方法をさぐりだすという、文学に課せられた役割は大きなものがあります。しかし、現在の文芸ジャーナリズムは、批評性を後退させ、商業的な成功ばかりを追い求める方向へと進んでいます。
 わたしたちは、こうした時代のなかで、時代の本質と人間の真実をみすえ、それを描き出していくことが、今の文学に求められていると考えます。それは、戦後の民主主義文学運動が積み重ねてきた成果を受けつぎ、よりいっそう発展させることで、文学を生きる糧として求める人たちとともに、わたしたちの活動をより深く、大きく広げていくことにほかなりません。
 わたしたちは、この時代のなかで、民主主義文学運動に課せられたものを自覚し、わたしたちの文学運動を創造と批評、組織と運動のあらゆる面から、発展させていくために全力をつくすことを決意します。

  20007年5月13日
日本民主主義文学会第22回大会  


 

【決議】 改憲手続き法案の採決強行に抗議する

 自民、公明の与党は十一日の参院憲法調査特別委員会で、九条改憲と地続きの改憲手続き法案の採決を強行し、与党の賛成多数で可決しました。そして十四日の本会議で採決しようとしています。
 各種の世論調査をみても今国会での手続き法案の成立を求める声は一割にも満たず、圧倒的な国民の慎重な審議を尽くすべきという声を無視しての強行でした。私たちは、国民主権の行使にかかわる憲法と直結した重要法案を、このような形で通すことに強く抗議します。
 この法案は、最低投票率を設けず、有権者の一割台、二割台の賛成でも憲法を変えることができること、自由な国民の意思表明が保障されるべき国民投票運動で五百万人にのぼる公務員、教育者の活動の自由を奪うこと、財界が金で憲法を買うことになる有料広告、改憲案づくりを促進する憲法審査会の常設等々、まだまだ議論を尽くさなければならない問題点を残しています。
 国会では数をたのんで強行をしても、国民との関係では政府与党は大きな矛盾をかかえています。読売新聞は十年前から憲法問題の世論調査をおこなってきましたが、憲法記念日を前にしての今回の調査では、改正派が、十年ぶりに50%を下回ったと、その変化を報告しています。また九条「改正」の必要性については圧倒的多数が「必要ない」と判断していることも報告されています。また、NHK、共同通信、「朝日」などでも九条については改定の必要がないというのが多数の声になっています。
 こうした世論調査の変化は、ここ数年の憲法を守る運動の発展の広がりが背景にあることはいうまでもありません。私たちもその発展に力を尽くしている「九条の会」は、この三年の間に草の根の力を全国津々浦々に広げており、組織された「九条の会」は六千をこえる規模になっています。
 国会の議席では多数でも、「九条守れ」の声を多数にすれば、彼らの野望はうちくだくことができます。
 私たちは、平和と民主主義という日本の未来がかかったこの問題で、自民、公明の政府与党の暴挙に強く抗議するとともに、改憲反対の運動をより大きくすることをよびかけるものです。

  2007年5月13日
日本民主主義文学会第22回大会  


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