「作者と読者の会」 2007年3月号 


 二月二十三日、今月は作者が遠方(北海道と京都)のため参加できず、読者のみの会となった。
「大夕張にて」報告者、宮寺清一氏。
 作者の宍戸律氏は一九八〇年初めに作品コンクールで入選し以後書きつづけてきた女流作家であるという紹介が報告者からなされた。
 四十年前、三菱炭鉱資本は炭鉱労働者や民主的な教師まで思想差別し追放した弾圧事件(岸本事件)と巨額な負債を背負って、地域が壊されていく現在の夕張市をかみ合わせて描いた、タイムリーなテーマをとらえているが、感動が弱い。四十年前の体験が資料に頼りすぎているからかと報告。
 作者に逢えることを楽しみにして参加したという読者は道路マップをひろげて作品を読んだが道がよく理解できずイメージがわかない。他の参加者からも作者はマップをみて書いたのか、実際に現地に足を運んだのだろうか、四十年前の事件と現在を結びつけるむずかしさを感じた等、いろいろな意見が出され、議論がおもしろく続いた。

「化粧」報告者、旭爪あかね氏。
 作品の構成、作品の意図がていねいに報告された。
 女性が化粧によって心が明るくなったり、いきいきする化粧の意味と、人間らしく生きていく活動が化粧ボランティアを通して描かれているが、母親との関係から、老いとどのように向き合っていくか、今後の人生をどう生きていくのか、テーマが割れている印象がする。
 化粧の意味を再発見した。「あるがまま」を隠すのでなく、受け入れてより明るく生きることだという報告がなされた。
 参加した読者からも「あるがまま」と「化粧」は矛盾するようだがけっして対立していない。
 母との関係(もともと薄い親子関係、母との心の齟齬の実情)など、よくわからないところもある。
 作者には、母との関係についてもっと掘り下げて描きたいモチーフがあるのではないか、テーマがつかみきれていない等出された。
 今月は参加者(八人)が少なかったが二作品ともおもしろい話し合いになった。                                   
(原 恒子) 
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