|
十二月八日の合評会は、支部誌・同人誌推薦作の中から三作品を選び、司会を丹羽郁生氏、報告を鶴岡征雄氏が務め、大阪、京都、金沢からの参加者を含む十七人で始められた。
神林規子『祭の夜』…「全体の構成、ていねいな描かれ方はよかったが、夫が妻の全てを受け入れているため物足りなさがあった。ふとん太鼓の描写をより鮮明に」との評価に読者も賛同した。また、介護のリアリティがほしいとの意見もあった。作者は「人間らしく生きたい。祭に象徴される新しい共同体を模索したかった」と語った。「老い」をどう考えていくか、『カシスのリキュール』や『花殻とスーツ』などの作品で描かれたように、文学的探求の時であるとの意見が出され、私も同感であった。
八鍬泰弘『兄ちゃん』…「兄弟の交流や演説場面の描き方として傷のある小説だが、感動がある」との評価に対し、読者からも和夫と泰弘の実在感があり、末の弟が犬に食べられてしまう場面は時を経ても忘れられない映像として残るだろうなどと、感動したとの声で占められた。作者は「兄は優秀で父のようだった。距離のあった兄が満州の話をした時、初めて泣いた。衝撃を受けた」と、描かずにはいられなかった胸の内を語った。
須賀田省一『松本清張が探究したリアリズムの文学』…「清張の論点に軸足をおいたが故の限界があったが、貴重な試みであり、刺激を受けた評論だった」との報告に対し、清張が民主文学をどう見ていたかの須賀田氏の評価が必要であるなどの意見が出された。須賀田氏は、「清張はリアリズム研究会のメンバーと肌があったと思われる。そのことを多くの人々の記憶に留めておいてほしいと考え、まとめた」と静かな語り口で熱き思いを述べた。清張と民主文学のかけ橋を求め、更なる探究を切望する声が多くあがった。
引き続き行われた「入選者を囲む集い」においても絶え間なく意見交換が続いた。 |
|