「作者と読者の会」 2006年6月 


 六月三十日(金)、『民主文学』七月号に掲載された二作品の「作者と読者の会」は、宮寺清一氏を司会に開かれた。参加された方が二十七人にもおよび、あわや事務所に入りきれないかと思われるほどの盛況ぶりだった。
 金子喜美子「カシスのリキュール」の報告者岩渕剛氏が、「与えられた条件の中でそれをどう活かして生きるか」という主人公自身の問いかけに対し「生を肯定的に捉える、前向きな生き方を見出したのだ」と口火を切られた。感想の多くはその報告に重ね合わせ、病に倒れたことをきっかけに、当たり前としていた自然界の営みを生命あるものへのいとおしさとして敏感に感じる主人公の心のうちが描かれ、読者は励まされたとの評価であった。また、病にあっても作品を描きあげられた作者に、感動したことを伝えたいという方が多く参加されていた。それを前提にしながらも、その境地に至るまでの心模様を描きいれるかをめぐって論議もされたが、結論はない。最後に車椅子の作者は「病気になった日常をありのままに描いたので小説として足りないところもあると思うが、生きていること自体を描いた。昔の友人や知人が駆けつけてきてくれ、カシスのリキュールで乾杯したい気持ち」と、付き添って来られた息子さんの脇で満面の笑みを浮かべられた。

 竹之内継「二十三夜様」。旭爪あかね氏は「ローラ・インガルス・ワイルダー著『大きな森の小さな家』を髣髴とさせる。作者はよく観察する目をもち、日常を描きながら人生や人間を考えさせられて味わい深い」と報告された。読者からも、「子どもの視点でありながら戦時の静かな農村とそこに暮らす人々を活写して想像力がそそられた。描写力に優れ、まるで絵画をみ、音楽を聴いているようだ。つる子の心が周囲の状況を反射しているようでもあり、貴重な作品」という感想が並んだ。作者から「幼い頃の体験を土台に想像で描いた」と述べられ、参加者は二度、感心し唸った。                                                      
(櫂 悦子) 
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