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三月三十一日の「作者と読者の会」は、十七人が参加して開かれた。司会は旭爪あかねさんだった。
初めに、林田遼子さんの「いもうと」について、報告者の小林昭さんから、細かく丁寧な報告がなされた。小林さんはこの小説のあらすじを紹介したあと、「兄の和郎がよく描けている」「小説でしか描けないものを書いている。とりわけ冒頭の部分にそれを感じる」「笑いを誘う場面がある。つまりそれはリアリティがあるということだ」「一枚の絵の中に沢山のものが描かれている」と高く評価した。その上で、加藤周一のデノテーション(指示機能)、コノテーション(喚起機能)という言葉を引きながら、この小説は、コノテーションが豊かに機能して、イメージ豊かなものになっていると述べた。
討論に入って、「この作品の中に創価学会は必要なかったのではないか」「和郎はイヤな人だが、憎めない」「三人の兄妹の人生が見えてくる」「和郎の俗物性と主人公の俗物性も共に描かれている」など多彩な意見が出された。
続いて、ほうがとよこさんの「ムグンファのうた」についての報告が森与志男さんからなされた。森さんは「この小説は非常に若々しい表現で描かれている」「古くさい表現がなく、透明感のある文章である」「主人公・母・看護婦と二人のおばさんという風に明と暗を浮き立たせて描いている」「作中の少年の姿は時代は異なるが、イラクの少年たちを想像させる」など、高い評価であった。
討論では、「一気に小説の中に引き込まれた」「ムグンファをもう少し分かりやすく説明してほしかった」「最後に主人公がごめんねという処が一番いい」「文章のリズムの中に解放感が感じられる」などおおむね好評で、「この小説は二枚という短いエッセイから生まれた」という内明け話も披露された。
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