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一月二十七日の「作者と読者の会」は、二十四人が参加して開かれた。澤田章子さんの司会で高揚した集まりになった。
はじめに、山形暁子さんから、塚原理恵「贈り物」の報告があった。医療ミスがなぜ起きるのか、どうしたら防げるのかを、主人公三ヶ木綾子の日常生活に起きた事件をからませながら原因を探っていく。作者の新たな境地を拓く試みでもあり、とてもよい小説である。との報告があった。
「医療ミスと贈り物の二つのテーマを追うことのむずかしさを感じたが、ミステリーの謎解きの面白さもあった」「医療と荷物発送の現場のゆとりのなさは同じ。それがうまく噛み合っている」「人間の思いおよばないところのコンピュータミスが人間の生活や生命を脅かす物騒な世の中が描かれている」「先輩の手紙は、医療問題の根幹に触れているが、書き過ぎていないか」など、作者へ心を寄せ、作品を評価する意見が多く出された。
つづいて、吉開那津子さんから、柴垣文子「鎮守の杜」の報告があった。非合理的な暗い面が、神社をどうするか、あらわになっているところを描いており、負の意識に着目し、現代のおそろしさをとらえている。民主文学ではあまり試みられていないテーマであり、強い関心をもって読んだ。シャーマニズムについての設定が新鮮であるとの報告であった。
「靖国、農業と後継者、戦争、憲法、リストラ、定年などの現代社会の諸問題を主人公の日常に描き、読み応えがあった」「三人の老人の個性が明確で興味深い」「そこに侵略戦争の歴史と村史がある」「合理的精神の持主の主人公が、正月は神社で酒を飲むのが一番という矛盾が交錯している」「氏子総会で、日本神道政治連盟への寄付をやめにし、総代表の推すインチキっぽい女宮司の就任を拒否する氏子たちの合理的精神はどこから生じてくるのか」「作者のルポルタージュ『南山城村村長選挙』の続編を読む思いがした」「わが文学会にこういう作品が誕生したことは嬉しい」など、新しい小説を語り合い、充実し、発展の方向をみた集まりであった。 |
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