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激動の二〇〇五年最後の「作者と読者の会」は十二月十日近年最高の二十七人が参加して開かれた。報告者は風見梢太郎氏。司会は平瀬誠一氏。作品は、十二月号恒例の「支部誌・同人誌推薦作品」で優秀作となった林東植氏の「台湾どじょう」と入選作の小川京子氏の「雪上の影」。
風見氏は「台湾どじょう」の登場人物、ストーリーを丁寧に紹介し太平洋戦争時代の朝鮮人をとりまく日本人の意識がリアルに描けていること、描写のすぐれている場面として、捕まえた台湾どじょうの様子などを指摘。問題点として、日記風で一つのことに焦点が当たっていないことなどを提起。
討論のなかで、小説的な面白さがない、「台湾どじょう」(雷魚)の意味がわからない、文中でわかるようにして欲しかった、という意見もあったが、少年の目を通して朝鮮人に対する差別を告発しており、味わい深い作品、軽やかなスピード感のあるいい作品、差別に抗して生きることを教える母親の姿も描かれ、絶対に書かれなければならなかった作品である、との意見が強く出された。
「雪上の影」について風見氏は八歳になったばかりの主人公「私」と特攻隊員の「平岡」さんとの交流を軸に敗戦で朝鮮北部に残された日本人の過酷な状況を描いて、戦争に対する怒り、国民にこんな困難を強いた者に対する怒りが湧いてくる、強い力を持った作品などと報告。
討論では、死と隣り合わせの窮乏生活、迫力ある表現など非常にすぐれた作品、自分も同じような引き揚げの体験をしたが、辛い話としての回想にとどめず作品としてまとめたことはすごい、大人になった「私」の視点が折り込まれているが、この作品では成功しているのではないかなどの意見が多く出された。
作者への質問として、防空壕としては粗末ではないか、「平岡」さんを特攻隊員にしたこと、自決するためのアヘンとその意味などについて小川さんは、一つ一つ丁重に答え、誠実な人柄がにじみ出ていた。
終了後、小川さんを囲んで「新人をはげます集い」が開かれ、出席者から小川さんへの期待の言葉が相次いで寄せられた。 |
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