「作者と読者の会」 2005年11月 


 十月二十八日(金)の作者と読者の会は、十一月号の竹之内宏悠「八幡原工業団地」と本田功「菜の花畑」の二作品についておこなった。司会は宮本阿伎氏。参加者十三名。
 「八幡原工業団地」について報告者の田島一氏は「現代の最先端と切り結んだアクチュアルな作品である。全体としてまとまっており、雪の米沢に向かう主人公の姿が目に見えるような気がした。今と向き合う姿勢が新鮮である」と評価。「しかし、主人公、健二の人物像が希薄なのは、事件があって健二を描くのではなく、健二という人間をより深く描くことによって、事件があることが必要」という作者の創作の基本姿勢に言及された。
 参加者からは「専門用語が理解できない」、「下請け労働者の実態がよく描かれているが、健二の人間像が浮かびあがってこない」、「岡崎の年齢設定があいまいである」という感想が述べられた。最後に作者から「燃料をごまかすという工場長、相田の行為の背景には小単位で独立採算制を追及されている今の企業の仕組みがある」との発言があった。
 本田功「菜の花畑」について報告者の岩渕剛氏は作品について歴史的事実に言及。「例えば天皇巡幸は一九五〇年だから白馬に乗ることはあり得ない、お召し列車が一両編成ということもないはず」と疑問を投げかけた。当時、小学二年だった作者は、「一両編成は鮮明な記憶だ」と主張、「白馬については取材によるもの」と述べられた。
 合評では、「菜の花畑の美しい描写と黒いお召し列車が色彩豊かに描かれている」「最後に、天皇の責任を追及する人が出てくるが唐突であり、伏線が必要だ」との指摘もあった。巡幸のコース等について二次会まで、もつれ込み盛り上がっていた。  
(大家 学) 
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