日本民主主義文学会第25回大会【決議】

  近代の立憲主義を根本から否定し、9条改悪に道を開く96条改憲に反対する

 いま永田町を憲法改悪の亡霊が歩き回っている。
 安倍晋三首相は六年前に挫折した改憲の執念を再び燃やし、首相に返り咲くやただちに憲法改悪に動き出した。安倍自民党とそれに呼応する改憲勢力の最大の狙いが、戦争と武力の放棄をうたった9条改憲にあることは明白である。今回は、前回の挫折から教訓を汲み、改憲要件を定めた96条改憲という搦め手から攻めてきているところに新しい特徴がある。
 彼らは改憲発議の要件を衆参両院の3分の2以上の賛成から、過半数に大きく緩和しようとしている。
 安倍首相は96条改悪を自民党の参院選公約に盛り込むと明言し、参院選の争点に掲げようとしている。石破茂幹事長はこの九六条改憲問題について「国民は、9条の改憲を念頭に置いて投票していただきたい」と、狙いが九条改憲にあることをあけすけに語っている。さらに自民党の改憲草案では言論・表現の自由をはじめとする基本的人権に大幅な制限を加えている。
 96条問題は単なる手続き論ではない。故井上ひさし氏が「憲法は国家に対する国民の命令」と繰り返し語っていたように、近代憲法は自由と人権を守るため国民が国家権力を縛るものということが大原則である。したがって時の権力が都合よく変えられないところに眼目がある。実際、憲法改定に高いハードルを設けているのは日本だけではない。例えば、アメリカは連邦上下院それぞれの3分の2以上の賛成および5分の4以上の州議会の同意、ドイツは連邦上下院それぞれの3分の2以上の賛成、フランスは上下各院の過半数の賛成および両院合同会議の5分の3以上の賛成である。フランスは国民投票を必要とする場合もある。
 このように、96条は近代憲法の根本理念にかかわるものだけに、憲法学者の間では、9条改憲を唱える人からも96条改憲への強い反対の声があがっている。
 私たちは、小林多喜二、宮本百合子などの反戦平和のたたかいをひきつぐ文学団体として、96条改憲の動きに反対し、国民とともに力を合わせて平和憲法を守り抜く決意を表明する。

 2013年5月12日
日本民主主義文学会第25回大会   


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