心さわぐ文学サロン

第31回 田本真啓『コソコソさんの紅い花』

 「心さわぐ文学サロン」が、十二月二十日(土)午後、オンライン開催されました。今回のテキストは、「しんぶん赤旗」に連載された田本真啓『コソコソさんの紅い花』(新日本出版社)で、報告者は浅尾大輔氏です。参加者は申し込み時点で文学会会員外の方も多く四十九名でした。

 浅尾氏は、五頁にわたる緻密なレジュメを基に、本作は、登場人物三人の過去と現在を往還する繊細な語りと「ファンタジー的仕掛」によって、長崎県五島列島の「隠れキリシタン」信仰とは何か。現代に伸びる価値とは何かというテーマに迫るミステリアスな物語だと解説。

 参加者からは「三人を矛盾なく重ねているのがすごい」「紅い花へ収斂していくのが見事」「SF的な想像力を膨らませる」「透明感のある作品だ。謎がだんだん解けていくのが面白い」「人の心のつながりが美しい」などの感想が出され、ファンタジーとリアリズムについても、多様な意見が交わされました。

 作者は質問に答えて「五島列島の地名も人物も史実通りにはしていない」と説明。「作品は予定調和では創れない。青写真はあるが、初めに考えた通りには行かない。将棋を打つような感覚だ」と創作論を語り、「木に記憶があれば、それが語る歴史があってもいい」と、作品にあふれるロマンを語りました。

 もっと時間が欲しいと思えるような活発な感想が交わされた充実のひと時でした。

 
(松本喜久夫) 

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