七月六日(土)「心さわぐ文学サロン」が二十二名の参加で開かれました。
倉園沙樹子著の短編集のうち「巨艦の幻影」と「誠太郎の判断」をめぐって松本喜久夫氏から作品報告を受けて話し合われました。どちらも戦時中の広島を舞台にしていて、「巨艦─」は軍艦製造に携わる峰山清吉とその一家の物語で、清吉や長男、次女は「お上」に忠実で、次男は何事にも疑問を呈し、清吉が養育している原口青年は「アカ」として特高に引っ張られ、次男は原口に影響されてゆくが、清吉も最後には「お上」に「騙されちゃあいけん」と叫ぶに至る。
「誠太郎の判断」は原爆が投下される直前まで生徒たちを勤労奉仕に引率していたが、教頭の誠太郎が危険を感じて被爆を回避させる話である。
両作品に対して、元教師の方から、文学の喚起力を感じた。またよく調べて書かれている。描かれた人物が個性的で印象に残るなどの評価の声が多かったが、「巨艦─」は一九四二年の物語だが、その当時は原口青年のような「アカ」は根絶やしにされていたはずではないか。清吉の十六歳の次男がこうもふてぶてしく特高に向かっていけるものなのかなどの声もあった。
作者が「あとがき」で強く主張しているように「過去の話」ではなく、今もなお「民衆をだま」し、それを正そうとする「人々を排斥する」ことがくりかえされているという「現代の話」として書いたという思いを受け止め、共通して今の時代にどう戦争体験を継承していくのかという感想で一致しました。
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