心さわぐ文学サロン

第26回 非正規労働者の現実とそのたたかい

 「心さわぐ文学サロン」が、十一月十八日(土)午後、開催された。これまでの「心さわぐシニア文学サロン」から発展的に名称を変えての初めての開催だった。テーマは「非正規労働者の現実とそのたたかい」、テキストは中嶋祥子さんの「非正規のうた」(連載『民主文学』二十二年一〜九月号、単行本・民主文学館・二十三年四月)。参加者は十九名だった。
冒頭、「文学サロン」責任者の青木陽子さんが、作品の内容・展開について報告した。主人公である奈緒子はパートで仕事を始めて、その面白さに目覚める。その一方、非正規労働者の厳しい現実に直面する。非正規のための労働組合の設立に係わり、様々なたたかいに深く関わり、やがて委員長としてリーダーシップを発揮する。次々と成果を上げていく様子が、すがすがしく描かれている。そこには文化活動が息づいている。もちろん「たたかいの数だけ傷を負う」現実もある。多くのたたかいのエピソードが描かれ、その一つ一つが読む者の心を打ち、奈緒子という人物の形象を豊かにしている。

 次いで非正規労働者の現状とそのたたかいについて、労働組合の立場から東京公務公共一般労働組合顧問の小林雅之さん、芸術家の立場から日本音楽家ユニオンの八重樫節子さんに発言いただいた。作者である中嶋さんから、自らの解雇を撤回させる裁判で勝利判決を得た十八年九月にいたる、四十数年にわたるたたかいとそこでの多くの出会いを、作品に関わって発言していただいた。
多くの意見、感想が表明された。

 「題名を見て、辛く苦しい作品ではないかと思ったが、明るさと楽しさに溢れた作品だった」「主人公の女性としての生き方に心打たれた」「文学は人間への励ましであることを強く感じた」「仕事への誇りと文化への願いが根底にあって、それを実現しつつ、たたかいを広げていく、日本の労働者のたたかいの一つの典型を表現している」「現在求められている、プロレタリア文学の一つのあり方ではないか」

 さらに、多様な論点で意見が表明された。労働運動と文化活動の相乗的関係。たたかいにおける家庭の問題を文学的にどう表現するか。共産党の役割、姿をどう描くか、あるいは描くべきか。群衆と、個人をどう効果的に表現するか、などである。
 はじめての「心さわぐ文学サロン」は共感的に作品理解を深め、文学の可能性を確かめ合い、課題を互いに投げかける、まさに「心さわぐ」場となった。

 
 (馬場雅史) 

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