第25回 一九七〇年前後、学生たちは何を求めたのか |
四月二十三日(土)午後、「一九七〇年前後、学生たちは何を求めたのか」をテーマに、シニア文学サロンが開かれた。参加者は三十八人。テキストは原健一『大糸線純情小景』。
報告の乙部宗徳氏は、『中央公論』四月号の特集なども紹介しながら、当時の学生の闘いを全共闘運動≠ニ見ることの皮相を指摘し、民主的学生運動のひろがりを資料をあげて説明した。そういう背景をもとにテキストに収載された「国境の村から」などが描かれており、大学卒業後にも学生時代の闘いを忘れないために小説を書いていく主人公の思いがさわやかであると述べた。女性の描き方には難もあると思うが、それを含め、「団塊の世代」が受け継ぎ、残したもの、とくにロスジェネとよばれる団塊ジュニアに背負わせたものをどう考えるか、討論したいと提起した。
サロンには、著者の学生時や中高生時代の友人も少なからず参加し、主人公に投影された著者の少年期や、自治会づくりや暴力学生と対峙した日の紹介があった。受験期や学生時代、また結婚にいたる三人の女性の描き方が主人公の一方的な芽でよく分からない点が残されるとの指摘もあった。
過去の体験をどうとらえるかが議論の一つになった。体験や回顧が文学世界を成立させるには、モチーフの現代性とともにそこに何を見つけるか、普遍に通じる「個」の発見が重要との意見もあった。
若者に何を提示し、若者とともに日本をどう変えていくか、とこの世代の役割の指摘には共感する思いが広がった。
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