第15回 70年安保をたたかった仲間は、今
―― 風見梢太郎『再びの朝』を読む
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九月十八日午後六時より文学会事務所で開催した。風見梢太郎作「再びの朝」を読み、「七〇年安保をたたかった仲間は、今」のテーマで話し合った。報告者は牛久保建男氏、司会は乙部宗徳氏。参加人数は十五名。
報告は、七〇年代初頭の詳しい社会情勢から始まり、他の風見作品の内容を含めて、日本共産党員として社会変革の道を歩み続けた四十年の重さを描いた作品と位置付けた。
話し合いは自己紹介を兼ねて参加者自身の四十年が語られた。共産党の専従だったが生活苦で教職に転身した方、大企業内で管理職になってもリベラルな主張をしてきた方、民青専従や党勤務を経て出版社勤務になった方、区議会議員、大手銀行員から作家、教員、平和活動家、生協職員だった方々が各自の闘いを語った。
作品の中にも出てくる「思想」ということが話題となった。二十代の若者が未熟なまま企業戦線に送り出され、たいへんな苦悩を味わった。この主人公も思想差別により研究を妨害される。苦労して守った「思想」とは何だったのか。「社会変革の立場」という説明だけでは不満だ。感情にまで高め、毎日の生活に表れてくる思想を描いてほしい。一般読者にもわかるように描くのが文学である。また、時代の中でネガティブに生きた人物をもっと書いてとの要望もあった。原発問題については、腐食により放射性物質除去システムが働かないとかトリチウムの垂れ流しなど作品で初めて知った、分かり易く描かれている、の意見があった。一方、日本とアメリカの権力が手を組んで日本を変えていった。大勢の人に取材して、もっと構造的に書いてほしい、続編に期待するとの声もあった。
作者は、職場ではすごく孤独で、研究と活動の板挟みで苦しんだが、仲間や小説を書くことで切り抜けられた。企業での思想差別は九五年の裁判判決から緩和された。研究に携わる優秀な人がどう活動するか、組織の中の個人の問題は考え続けたい、と述べた。
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