心さわぐシニア文学サロン

第12回  芝田敏之「種火」から教員採用事情を考える
 四月二十九日午後二時から、文学会事務所で第十二回「心さわぐシニア文学サロン」が開かれました。芝田敏之さんの「種火」(『民主文学』三月号)を題材にして、一九七〇年代の教員採用の問題を中心に様々な教育問題が話し合われました。参加者は、作者も含めて十二名でした。
 最初に報告者の青木資二さんから、教員の思想差別や採用問題に狭めず、安倍政権下の現代の時代状況と重ね合わせて教育を考えていきたいという趣旨で、A3五枚にわたる詳細な資料をもとにした問題提起がありました。
 続いて作者の芝田さんから発言がありました。芝田さんは民主文学に十八年ぶりの登場。かつて「小豆色の電車」(『民主文学』一九九五年四月)を発表されています。今回の「種火」は採用試験に落ちた悔しさをいつか書こうと長年あたためていた作品だそうです。
 「種火」の文中の採用試験の面接で教師になってやりたいことを問われ「生徒たちが、勉強は楽しい、今まで知らなかったことを知ることは楽しいと、実感できるような教え方のできる教師になりたい」「教師自身が機関車に火をつけられる種火を持っていなければならないと思います」と応えます。
 芝田さんは、作品の中の面接で例にあげたモーター作りを会場で展開しました。磁石や乾電池、大きめの消しゴム、エナメル線やゼムクリップをテーブルに並べ、何事かと思って注目する参加者の前で、「種火」に書かれたモーターを作り始めたのです。小さなモーターは見事に動き出しました。芝田さんの解説を聞きながら、参加者は「フレミングの左手の法則」を思い出し、指を折り曲げたりしながら、モーターの動きに見入りました。
 作中に「自分は教師に向いている。生徒の苦しみに寄り添うことができ、生徒の内なる機関車に点火できる種火もある。もし自分が採用されないとすれば、県教委の人を観る目が曇っているのだ」という文がありますが、このような教師を採用試験で振り落とすという事実が各自治体で行われていたのです。討論では参加者から、それぞれが体験した思想差別や採用試験の状況なども報告されました。
 「種火」の問題提起は、教育世界だけの問題ではなく、学校から仕事に移行した後にも必要なもので、どう教育を受けたかとともにどう社会に出て行くのかも重要な問題であるという発言もありました。安倍政権による教育改悪の実態にどう迫っていくのか、展望をどこにどのように見出して書いていくのか、大きな課題を与えられた会でした。
(佐和宏子) 

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