心さわぐシニア文学サロン

第8回 1960年代の青春 「もう一度選ぶなら」をめぐって

 (08年)10月18日に、第8回心さわぐシニア文学サロンが開かれた。今回のテーマは、一九六〇年代の青春「もう一度選ぶなら」をめぐって。六月号に掲載された真木和泉氏の東京教育大学の筑波移転反対闘争を描いた作品の時代背景を、作者より下の世代、当時労働者で働いていた側という違う場にいた二人の報告で深めようという狙いで行われた。参加者は十八人。
 松井活氏は、在籍していた高校でバリケード封鎖を行った「全共闘」の処分者に出された「確認書」にふれて、「暴力」と正当な政治活動の峻別が必要だったことや、大学民主化闘争の中で打ち出された学生を含む全構成員自治の視点の欠如などを指摘して、作品のモチーフが十分響いてこなかったとした。
 仙洞田一彦氏は、町工場の二階に住みこんで、カメラの部品をつくる仕事をしていて、平日は毎日二時間残業の働いて寝るだけの生活で、学生たちの行動は駅で目撃する機会はあったが工場の中ではそうした話は出なかったことなどの体験を話した。
 討議では、学生運動の体験を中心に話されたが、いろいろな間違いや不足はあっても、それが今の生き方にどう繋がっているかを深めることの大事さが浮かび上がってきたように思う。時評で作品を知ったことをきっかけに文学教室に通うようになった参加者もいて、あの時代にどう生きたかを描きたいという欲求の強さとそれが広がりをもつことを改めて感じた。
 最後に真木氏が東教大のたたかいが外に広がらず孤立したこと、作品は留置場の話を核にして、当時の状況は入り組んでいるため簡単に描いたと述べた。
 
(乙部宗徳) 

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