心さわぐシニア文学サロン

第4回  現代のプロレタリア文学

 集いは、八月十九日午後二時より、文学会事務所で開かれ、十二人が参加した。今回のテーマは「現代のプロレタリア文学」で、報告者の乙部宗徳氏が、『すばる』七月号の「特集 プロレタリア文学の逆襲」をテキストに報告した。司会は能島龍三氏。
 乙部氏はまず、この間、プロレタリア文学はどう語られてきたかとして、文壇での変化に注目し、「『すばる』の特集では、作品が、かなり真っ当に、そして新鮮な印象を持たれて読まれた」と指摘。評者にプロレタリア文学はどう読まれたかについて、@人間の本来性──人とのむすびつき、貧しさの中でも遊びや喜びを描いているA今日の現実、そこに生きる人々の心情を先見的に描いているB作品としての魅力C運動という側面への注目D政治(共産党)によって歪められていったという批判、という点を強調した。そのうえで、いまプロレタリア文学が注目される点に、労働者の「出会い」と「連帯」があること、その労働者のつながりをどう描くかに、現代の「プロレタリア文学」に課題があると結んだ。
 報告をうけて、参加者が各自のプロレタリア文学との出合いも語り合いながら、話は「現代におけるプロレタリア文学とは何か」にも及び、活発な討論となった。ニート、フリーター、ネットカフェ難民などといった「格差社会の日常」を私小説的に描いてもそれがプロレタリア文学といえるのか、「社会システムまで視野に入れ」「戦略的なフィクションとして描き出す」という提起をどう考えるか、など熱い論議が展開された。その中で、「現代のプロレタリア文学」と評価されている吉田修一『日曜日たち』が次回のテーマとして決まった。さらに論議の発展を期待したい。 
(久野通広)

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