心さわぐシニア文学サロン

第3回  私が考えていること、書きたいこと

 集いは、六月十七日(日)午後三時から五時半まで文学会事務所で十八名が参加し、少し汗ばみ、木漏れ日の射す窓辺にわれらが三十数年前を想い起こしつつ熱くかつ臍をかむ思いで、それぞれが実体験に根ざした議論をしあいました。
 テーマは、「私が考えていること、書きたいこと」。報告者源内純子さん、平良春徳さん、能島龍三さん、司会丹羽郁生さん。
 源内さんは、中規模の民間病院を一郭で支える事務職員の世界を描きたく、働くことと書くことを、どう統一していくか。登場人物への人間的なまなざしを深めて小説世界を構築していくことへの、大胆な構想と主人公たちへの地についた愛おしさの一端を吐露し、作家として客観的な観察力を磨いている旨を報告しました。
 平良さんは、過労死自殺をはかった息子と、定年までがむしゃらに働いてきた父とその家族をとおして、現代社会がかかえる様々な矛盾や労働現場を考えながら、青年が他者と本心から向き合って、関わりあって、ときには傷ついても、協同への道を探ることは可能なのだろうかと提起しました。団塊の世代である父は、仲間たちと、職場でものをつくるなかで、技術を向上させ、充実感や一体感を覚え、人間同士助け合って成長していくことに、大きな喜びや感動があり、今もそれが生きる支えであること。そして先行する父親たちの独りよがりを乗り越えて、子どもたちの世代により接近し、ともにこの時代を生きる同士としての息子への思い、父と子の絆、励ましを書いていきたいと報告しました。
 能島さんは、一、今やっていること─仕事・闘い・文学 二、これまでと今 三、最近受けている刺激 四、考えていること 五、書こうとしていることを報告しました。職場の喜び、悲しみ、苦しみを短編として。父親から自分、そして自分の子どもまでの、三世代の人間が歩んできた長編の取材、そして今書き始めていることを披瀝しました。能島さんの描く父親像が、戦前、戦中、戦後そして現代へと繋がる大河小説です。
 討論では、団塊の世代らしく勇気のある発言。父親母親としての含蓄のある発言。団塊の世代として生きてきた六十年が、今問われている等お互い創作意欲をかきたてられました。
 懇親会では、この若さを未来のために書くエネルギーにすることを約束しあい、名残惜しみつつ再会を期し、晴れの大塚駅前で別れました。  
(玉造修)

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