「作者と読者の会」
一月号と二月号の「作者と読者の会」は、一月三十日(金)に、能島龍三「追憶のとき」(一月号)池戸豊次「猿檻」(二月号)を対象に行われた。十四人が参加。司会は乙部宗徳氏。
「追憶のとき」は青木陽子氏が報告した。青木氏は各章(五章)ごとに特徴を要約、また登場人物についてのベ、作品の主題・感想を次のように報告した。「夫の裏切りを契機に自立していく母親を、戦争時から戦後へと変転する時代を生きた女性の一つの象徴として描こうとした作品。少年とニワトリの触れ合う姿は読む者を楽しく作品世界に引きずり込む。このありさまを背景に母の事情を描いていくが、さすがの場面構築だと思った」とのべた。参加者からは、「短編のお手本のような作品。導入がとてもいいし、ニワトリの場面はほっとする」「母に対して客観視している姉の姿がいい」などの意見が出された。最後に作者からは「戦争に関わることを書いてきたが、戦後八〇年の今、ジェンダーの視点で母親を見てみたかった。姉の存在は一つの答えにつながる存在であったらと思って書いた」とのべた。
「猿檻」は風見梢太郎氏が報告。風見氏は登場人物とストーリーについてのべた後作品について「長い作品だが文章力がすばらしく、池戸ワールドの集大成の作品ではないかと思う。田舎の濃密な人間関係、個性的な人物がよく描けている。終盤の火振り漁の情景描写は秀逸。この土地への愛情がみごとに表現されている。ケイの話がないとすれば、テーマがより鮮明になったのではないか、多恵との関係も書きやすくなったのではないか」と報告した。参加者からは「文学の香を感じる作品。文章、描写がとてもいい」「自然とそこでの暮らしを描く文章がいい。池戸作品の特徴だと思う」「ケイと多恵のバランスが疑問。ケイを書くなら多恵は書かない、多恵を書くならケイは書かない方がよかったのではないか」などの意見が出された。作者からは「ケイの存在と田舎での暮らし、再生とは切り離せないと思って書いた。そこが書く動機だった」とのべた。
(高野裕治)
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