「作者と読者の会」
一、二月号の「作者と読者の会」は、一月三十一日(金)に横田昌則「小さな羊」(一月号)橘あおい「詐欺師」(同)たなかもとじ「九条の碑」(二月号)の三作品を対象に行われた。十二人が参加。司会は乙部宗徳氏
「小さな羊」は浅尾大輔氏が報告した。浅尾氏はまず横田作品の特徴について「ミステリー仕立て」「的確な描写」「人物のなりや状況が分かる自然な会話」「現代社会の大きな問題・矛盾を描き、読者を鼓舞する結末を用意する」四点にあるとして、具体的に作品にそって報告した。
参加者からは、「好感をもてる地方議員の姿がよく描けている」「行政の立場も提示し、読者に考えさせる工夫をしている」「書き方にも工夫がある。会話を『 』と―にわけて、読者が読み進められるようにしている」などの意見が出された。作者からは「十回くらい書き直した。特に相談者の阪井さんの描写に悩んだ。会話の処理は意図的にした。強弱を工夫したいと思った」と述べた。
「詐欺師」は仙洞田一彦氏が報告。仙洞田氏は「他人事ではない老いの現実を感じさせられた。高齢化社会の問題点を描いている。独り暮らしの高齢者の孤独も見え、老いの現実感、リアリティーを感じさせられた作品」と報告した。参加者からは「老いの現実を個人の問題として捉えるのではなく、年金制度など作者の批判精神を感じられる」「母親と娘二人との距離感が効果的だ」「静かに流れ、物語に入りやすい。作者が文体の変化へのチャレンジをしているように思える」など出された。作者は「自分のリアルな現実を書いた。視点人物を母にするかどうか迷ったが、自分の方にして、家族に起こっていることが初めて分かることがあった」と話した。
「九条の碑」は岩渕剛氏が報告。岩渕氏は「主人公が視覚障碍者であることがだんだんと分かるように描かれている。主人公がみずからの感覚をとぎすませて対応する。そうしたステップを経て認識の深まりを、読み手も追体験する。九条の碑に触ることで地球の重みと戦争放棄の条文の重みとが重ね合わさる。そこが作品の読みどころである」と報告した。参加者からは「視覚障碍者が平和運動に関わっていくが、目で見て感じるのとは別の感動を感じる」「主人公の離婚した原因はどこにあったのか疑問がのこる」「タイトルがややストレートすぎる感じがする。考えどころではないか」など意見が出された。作者は実際の体験から小説ができるまでの経過を述べて、「タイトルについてはいくつか考えたが、推敲を何度かするなかで、書きたいことはこれなので、このタイトルにした」と述べた。
(高野裕治)
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