「作者と読者の会」
十二月号の「支部誌・同人誌作品」の「作者と読者の会」は、十二月七日(土)に入選作品五編を取り上げて開かれ、選考委員が報告をした。十七人が参加。司会は乙部宗徳氏。
天野健「小鳥よ まっしぐらに飛んでいけ」を風見梢太郎氏が報告。風見氏は登場人物とストーリーを紹介し、「主人公の同僚の松岡の形象が素晴らしい。困難校でともに奮闘した松岡との関わりが情感深く描かれた作品」と批評した。参加者からは「生きていることの意味を問う作品」「松岡のことに絞って書いた方がよかったのでは」などの意見が出された。作者は「文学教室で一度書いた作品。寄せられた意見を参考にして改稿を重ねた」と述べた。
真名波田キリ「確かにここにいた僕は」は笹本敦史氏が報告。笹本氏は作品のあらすじを紹介し、主題について「人と人との出会い、つながりが閉塞状況を変えることをテーマにしている。物語としてうまくできていると思った」と報告した。参加者からは「深く傷つけられてきた二人が連帯をさぐる姿がよかった。胸に迫るものがある」「ホッとする中味で、読後温かみが残る作品だが、リアリティーはどうか」などの意見が出された。作者からは「社会的援助のない人の姿とはこういうものかと考えて書いた。自分の孤独に気づかないことの孤独はすごいことだなあと思った」と作品の動機が語られた。
山下優子「灯台と呼ばれた町」は岩崎明日香氏が報告。岩崎氏は「地方自治体の合併に反対する運動を題材に、町の様子やたたかう人々描かれている。自治体、公共の役割が問われているときだけに、大切な問題が描かれている作品」と報告。参加者からは「多くの人が町を守るために大きなたたかいをしたことがよくわかる作品」「運動を書く難しさがある。人間の存在が運動の後景になってしまう」など出された。作者は「福祉の町が確かに存在した、こうした町が広がれば社会はもっとよくなると思って書いた。その後の物語も書いてみたい」と述べた。
森本けいこ「わたしはだれ?~ツイッター事件簿~」の報告者石井正人氏は所用で欠席のため、文書による報告と氏が一月号文芸時評で書いたこの作品について部分を司会者が代読した。参加者からは「新鮮な感じで読んだ」「ドキドキしながら読んだ」「主人公の生き方をきめることと、詐欺事件がうまく関わっていないように感じた」など出された。作者からは「詐欺が弱いところに入り込んでいく、その心理が書けたらと考えた。ネット詐欺はこうしておこるという過程を伝えたいと思った」と発言があった。
清水潤「駆け出しの頃」は青木陽子氏が報告。青木氏は「新任教師の一年間の奮闘を描いた作品。自分に起こったことをすべて平等に書いたようだが、それでは自分史になってしまう。小説として書きたいことを絞った方がよかったのでは」と報告。参加者からは「子どもを大切にする原点が、父母を動かした実践の物語」「教育実践を通じて父母との関係の変化、深まりが重要では、主題がつかみきれずいたのではないか」という意見が出された。作者は「小説はこれが二作目。ほぼ事実を書いたもの」と発言があった。
終了後表彰式と交流会がおこなわれた。
(高野裕治)
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