「作者と読者の会」
十一月号の「作者と読者の会」は十月二十五日(金)午後六時から、須藤みゆき「キノコの涙」、祥賀谷悠「日置川」を対象に行われた。参加者はオンラインを含め十一名。今回は二人の作者が仕事等で残念ながら出席できなかった。司会は乙部宗徳氏。
「キノコの涙」については松木新氏が報告をした。松木氏は「福島第一原発事故と向き合う優れた作品。人間の過ちを全身で受け止めるキノコの姿があざやかに描かれている。その発想に新鮮さを感じた」と述べ、キノコを詠った詩、作品の特徴である比喩について、福島第一原発事故をめぐっての文学者の発言などを紹介し、解説をした。
討論では、「これまでの須藤作品にくらべ新鮮な感じがした」「比喩の使い方がうまい」「作風が変わった感じがするのは、社会的に大きなテーマ、モチーフにあるのではないか」など出された。
作者からは事前に文書発言が寄せられた。そのなかでは作品の意図や読者からの感想が述べられ、その中にも「以前と違って明るさを感じた」などが寄せられたようである。
「日置川」は仙洞田一彦氏が報告した。仙洞田氏はストーリーを追いながら説明をし、「主人公は水害で死んだ弟の生まれ変わりとして、未婚で生んだ息子を大事に育てる決意をする。作品の鍵はこの決意にあるのではないか。主人公の人間としての成長という角度から光を当てて描いたら読者を納得させたのではないか」と報告した。
討論では、「水害時に弟の手を話してしまい死なせたことへの贖罪から、生まれた息子への思いが出ているのではないか」「ジェンダーの視点から古い感じがある。やや通俗的な古い女性観に、作者の批評が至っていない感じがする」「書きなれていて、描写力があるが、リアリズムを考える必要があるのでは」「前半と八章以後がつながりが悪い」「作品の透明感あるところがいい」などの意見が出された。
(高野裕治)
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