「作者と読者の会」 2024年01月、02月号



                  「作者と読者の会」

一、二月号「民主文学新人賞作家特集」の「作者と読者の会」は、一月二十六日(金)午後六時より、一月号掲載のかなれ佳織「ソリャンカ」、笹本敦史「白いワンピース」、二月号掲載の田本真啓「狐づら」を対象に行われた。オンライン参加も含め二十一人が参加した。司会は乙部宗徳氏。

 「ソリャンカ」の報告は柴垣文子氏が行った。柴垣氏は、「身体の不調や夫との齟齬に悩みながら、ウクライナの食事に込められた願いに触発され、自らの生活を見つめ直そうとする女性の思いを描いた作品」と紹介、作品の特徴を八点述べた。討論では、「歯切れがよく、今の情勢に身近なところからコミットメントしている」「内面の働きをていねいに拾っているところが特徴的」など出された。作者からは、「日常の中で感じている戦争への憤りが書けないかと思って書いた」と述べた。

 「白いワンピース」は馬場雅史氏が報告。馬場氏は「ジェンダー、高齢者、外国人など社会的弱者の問題を、日常の中で捉え、主人公がその変化を受け止める姿を描いた作品」と紹介し、ストーリーと登場人物についてていねいに報告した。討論では「変化にとまどう五十代男性をていねいに描いている」「現代の新しい課題をリアルに描いている。親の複雑な心情をもう少し描いてもよかったのでは」「主人公のわかろうとするが、一方でとまどいもあるところがよく描けている」などの意見が出された。作者からは「五十代の男性が時代の変化にとまどうところを中心に描いた。とまどっているから結論はでない。だから深まりを欠いたところがあった」と述べた。

 「狐づら」は宮本阿伎氏が報告。宮本氏は作品の主題の追跡と表現の関係について述べ、「『いじめ』をきっかけとする孤独への危機意識からどう脱出すかという、少年期の苦しい記憶をたどるかたちで物語は構成されている。主題は少年の物語を超えて、どう生きるべきかの青年の問いを通奏低音として響かせている」と述べた。討論では「『いじめ』をきっかけに、少年から青年への脱皮の物語と読んだ」「方言が雰囲気を作っている。神話の使い方もよかったと思う」など出された。作者からは「孤独とは何だろうということを一番考えた。神話や方言など風土を書き込んだのは初めて、今後も生かしていきたい」と発言した。     
                          (高野裕治)
   

 
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