「作者と読者の会」 2022年05月号



 四月二十二日(金)午後六時より、事務所とオンライン参加で開催。苫孝二「三十三回忌」を田村光雄子氏が、髙橋英男「コスモスの咲く頃」を笹本敦史氏が報告。司会は高野裕治氏。事務所参加五名、オンライン参加九名。

 「三十三忌」について田村氏は、定時制高校からの三人の友情を描いている。特に樋口が暴力事件を起こして、私と清水が罰金を立て替えて刑務所に入らずに済むシーンは感動的だ。友情を三人の動きで捉えている。共産党員として自信を持って生きている主人公の存在感が光っていると報告した。
 討論では、三人が助け合って懸命に生きているところが、素晴らしい。主人公の葛藤も描いて欲しかった。「倶会一処」(ともに一つの処で会う)をタイトルにしたらよかったのではとの意見が出た。
 作者は、自分も七十歳になった。三十三回忌を終えると誰が墓を守るのかと思い、三人の友情を書き残そうと思ったと語った。

 「コスモスの咲く頃」について、笹本氏は被爆による白血病、大企業、高校教育などを題材に、若くして亡くなった杉谷の人柄、杉谷を育てた両親の生き方を描いた。杉谷への呼びかけ、両親の証言が地の文と混在しているが、自然に書き分けられていて違和感がない。両親が差別を受け始めた時期が場面によって違う印象を受けると報告した。
 討論の始めに、作者から杉谷を被爆二世と書いたが、正確には一九四六年六月一日以前に生まれているので、体内被爆者と書くべきであったと訂正の申し出があった。読者から、担任の「真ん中の席を空けておいてくれ」という言葉で物語に引き込まれた。四章で現実に引き戻され、余韻を楽しめなかった。三章までと四章は、別の作品というほど重さが違う。「杉谷よ」という呼びかけが詩的なリフレイン効果を感じたとの意見があった。
 作者は、子どもが親を名前で呼ぶようにしたら距離感が縮まった。四章を書きたいために三章までを書いたと語った。
                        (最上 裕)
 
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