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作者と読者の会
七月二十七日は今後千寿子作「柿」と青木資二作「スタンダード」を取り上げて行われた。参加者は十一名。
始めに「柿」を櫂悦子氏に丁寧なレジメに沿って報告してもらった。櫂氏は「四年ぶりに会った兄を前にして人が生きるとはどういう意味を持つのかを作者はこの小説で問おうとした」と強調された。会話が瑞々しく兄の人物形象を豊かに描いている。兄を思う妹の心情が溢れていて読後感は爽やかであるが、兄の問題の深部に迫られていず、妹の葛藤ももっと掘り下げていたら、さらに読み応えのある小説になったのではないかと話された。
参加者からは戦後の農村のさびれ方を思うと七十代の兄が畑仕事や柿を育てるという力仕事に耐えられるとは思えない。現実的には施設の人や隆夫婦の思いも聞きながら、よく相談する必要があるのではないか。柿の木の雑草を刈っている男性に兄の姿を彷彿させる最後の終わり方に妹の願望が滲み出ているが、行動に移すことが必要という意見があった。
次に「スタンダード」について岩渕剛氏から、詳細な資料に沿って報告があった。孫の翔平が夜中に奇妙な声をあげたりすることへの嫁の梨佳の心配に背中を押された六十代後半の浩一は授業参観に行き、子どもたちの黙々と掃除をする姿や、児童が一斉に学校目標を唱和するという行動に不安を覚える。懇談会でも道徳教育について賛否両論が出る。現実に教育の管理的な改革は加速化して、学校が学級の指導を均一化し、権力者に都合のいい考えを押し付ける場になっていることを無理なくリアルに描写していると話された。
参加者からは、担任の正木の苦悩や梨佳の悩みにもっと向き合った形で、解決の方向へ向かうとよかったのではないか。塾を減らしたり、浩一がすすめる集会にも正木や梨佳が参加しようとする方向がいささか早すぎる感があると出された。 (北嶋節子)
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