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作者と読者の会
四月六日午後六時より文学会事務所で開催され、栗木絵美作「コープの米」を乙部宗徳氏が、岩崎明日香作「れんげ畑と時計台」を風見梢太郎氏が報告した。司会は宮本阿伎氏。参加者は九名、うち一名がスカイプ参加であった。
「コープの米」について乙部氏は、高校生だった晴海が、祖父の小沢利三郎から、晴海の母親が「生まれてから今までで一番輝かしい日だった」という体験について聞くという構成になっており、作者の、貧しい人たちのために運動した「祖父」への誇りと運動を記録しておきたいというモチーフがあり、貴重な歴史的事実を「小説」として描こうという挑戦を評価しつつ、八十六年前という昔のことを描く場合調査は多角的にやらねばならないことなど、報告した。討論では、同時代に生まれた者として刺激をもらい共鳴した、説明に陥りがちな題材だが祖父の語りが生き生きしていていい、晴海は現在五十代だが、何をどう考えているのか主題との関係で深めてほしかった、コープの運動を歴史上で知り得たのが良かった、この時代の話を聞くことはないので新鮮に読んだなどの意見が出された。作者は、創作で書いたところは弱いので見抜かれてしまった、乙部氏の資料には驚いたことなど語った。
「れんげ畑と時計台」について風見氏は、「青い幟が呼んでいる」の続編として読んだ、全体として大変よく書けており、導入部から金がないことでのリアリティと緊張感がある、子どもだけで元住んでいた家に行く場面は、姉の幸代子の形象なども含め秀逸であり、官僚を目指していることで支配階級を描く萌芽を感じ、面白いなどと報告した。討論では、題名から東大(時計台)と現政権とのつながり、れんげ畑は貧困の象徴でありその対比でとらえた、れんげ畑の光景ときょうだい愛がいい、緋沙子は官僚への道とは違うところへ踏み出そうとしているがその矛盾や葛藤を描いてほしい、導入をせっぱつまった描写から始めるのがうまい、長編で書いた方がいいのでは、など意見が出された。作者は、れんげ畑の場面はこれまでに何度か書こうとして断念し、今回最も力を入れたので好評で嬉しい、緋沙子はこの後すぐには民青に入らない人物として構想しており、この後は構成を含め再検討が必要だと思っていると語った。
(三原和枝)
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