「作者と読者の会」 2017年11月号


 作者と読者の会
十月二十七日は櫂悦子作「小さき樹の言の葉」と木曽ひかる作「JK」を取り上げて行われた。参加者は九名(スカイプ参加も含む)。

始めに「JK」について能島龍三氏から構成、題材、モチーフとも現代の貧困の状況を映し出す描き方でよかったという報告があった。また主人公の美咲の設定は養護施設で同室の加奈に比べてややリアリティに欠けるのではないかという指摘があった。貧困家庭で親に捨てられた美咲が成績優秀という設定には無理があるのではないか。貧困家庭の子どもはしばしば学校の授業からおりざるを得ない程詰め込み教育が現実に行われていて、よほどの支援と本人の努力がないと難しい。自己省察力のある聡明な子に育つのは稀有なことであると思えると述べた。

参加者からは、加奈に引き摺られ、JKに染まる美咲が危険な目に遭うが、反省するくだりが早すぎる。美咲の内面の葛藤や高見先生との関係をていねいに描いた方がよかったという意見が出された。作者からは足りなかった点も気づくことができて今後の方向も見えてきたと語られた。

「小さき樹の言の葉」では風見梢太郎氏からの報告で原発問題、自主避難家庭の苦しい実態と孫の華の不登校の問題を扱っているが、取材に引き摺られ、テーマが複数でわかりにくい作品になっていると指摘があった。

参加者からは、華の描き方が小学三年の児童とは思えないほど大人に気づかいをして、本音が言えず、大人たちも華の寂しさに寄り添っていない。親子関係もすれ違っている。作者が何を書きたかったのか、華の小説が何を語っているのかわかりにくいという意見もあった。作者は原発や自主避難家庭を描くために取材を行ったが、その困難さを描くのに苦心したという手紙が(欠席のため)紹介された。      (北嶋節子)
 
「作者と読者の会」に戻る