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五月二十七日(金)は、新人賞受賞作岩崎明日香作「角煮とマルクス」を取り上げて行われた。参加者十一人。司会者は牛久保建男氏、報告者は久野通広氏。
報告では、この作品は新しい文学のうたごえともいえる若手作家の作品である。この作品は、作者の私的体験が主であるが、私的小説になっていない。それは、主人公緋沙子が父親への負い目を、時代の課題に真剣に取り組む中で、民青同盟や共産党に出合って、自分の力だけではなく、仲間と共に乗り越えようとしているところに、新鮮さがあり、読者の心に伝わるものがある。
参加者から、改めて、この作品の魅力と今後への期待が話された。まず、小説とは何か、の点でこの小説から学ぶべきことが多い。第一にモチーフの強さである。この小説のモチーフは、父親との別れである。父親と、一定の結着をつけたかったのではないか。また、この小説は、しっかりした論理の上に成り立っている。次にテーマでは、父親への記憶、父親との対峙や父親を巡る葛藤について、テーマに沿って無理なく描かれている。内容については、マルクスの、「多くの人々の幸せのために生きるんだ」ということが、全編に貫かれている。書き出しがうまい。また、中心は、主人公緋沙子が抱えていた葛藤をどう、すとんと落とせたかであるが、それは、後半(もし逃げていたら、いろんな活動続けておらんやろ。…‥)と言う姉との対話の中で、主人公が気付いていく。また、時間を追って、成長を追って、短編の連作か、長編小説で書くことを期待したい。タイトルも素敵である。
作者から、「この小説は、もっとも書きたくなかったことを書いたが、ここから始めるしかない、という思いで書いた。私自身の体験を小説として、書いた。今後は、民青に出合って、共産党に入って、その成長過程を一番書きたい。今回は、その結論だけを書いた」と語った。
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