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二月二十六日(金)、三月号の作者と読者の会が開かれた。
能島龍三作「永訣のかたち」をたなかもとじ氏が報告。作品は父と子の生き方、人生観の違いという切実な問題を題材としている。子の苦悩が、激動の時代を生きた父の姿をとらえなおし、父を受容することができて父との永訣ができたように思う。戦争の総括をしていないことがもたらす混乱と悲劇が描かれているなどと報告。参加者からは――父子の考えが違うのはやむを得ないが、戦争の傷跡は深い。他の一連の作品を読んで、全体像が分かるような印象がある。父親の乗り越えられなかったところは何かを、もうすこし書いてほしかった。墓を探す過程での夫婦の会話で話が展開するところが良くできている。主人公は佐川の言うことなど分かっているはずだが、苦悩する気持ちがよく伝わってきた。ハイヤーの上に下駄で上がる場面はリアリティーが感じられない。作者からは、基本的にはフィクションであること、戦争を書きたかった、他の作品に書いてあるからといって省略したのはよくなかったのかな、などとの発言。
川上重人作「無窮の彼方」は岩渕剛氏が報告。時代は一九五〇年の夏から冬にかけて。場所がどこと限定のないのは作者の意図だろう。戦後五年経っても癒えない傷、読んでいて辛くなるような作品。描かれているような土地では、老婆の面倒を見ている人もいるのではないか。老婆とまわりの人たちとの関係をもう少し書いてほしかったなどと報告。参加者からは――子供の視線に徹しているので、まわりが描かれたら、作品の世界が壊れるのではないか。洋一も老婆も戦争の遺族、しっかり生きなきゃどうなるのかというところまで書いてほしかった。必然性、位置関係で分かりにくいところがある。老婆の夫はどうなっているのか気になるなどの意見が出た。作者は、戦争法のたたかいに触発されて書いた。体験に題材を得ているなどと発言。
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