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十月二十八日(金)、岩崎明日香「十九時の夜明け」と原信雄「通訳」(ともに十一月号)をテーマに、牛久保建男氏司会の下、スカイプを含め十三名の参加で行われた。
「十九時の夜明け」については久野通広氏が北村隆志氏に代わり報告。久野氏は、この作品は、全体として貧困と格差・非正規労働に苦しむ若い世代の女性が踏み切る姿を描いた力作だと評価しながら、主人公咲像が、二歳年上の女性店長三輪などに比べ人間的魅力に乏しく、原稿を大幅に圧縮したためか、咲の変化に関わる香織の人物形象の彫り込み不足や、テーマの盛り込みすぎ感もあると指摘した。ただ、「正規になってから」とデモの誘いを断る咲にそういう人こそと紡いだ香織の言葉に、現代の若い世代の人間変革の可能性を示す上でのこの作品の価値があると述べた。
討論では、盛り込みすぎ感やそのため結末への急展開が出来すぎではないか、咲のように頑張れない若者も相当いる中で、咲を単純に「若い世代」の典型のように見るのには抵抗があるなどの一方で、文章表現や文学的センスが秀逸だ、若い作家がなかなか真っ当な描き方をしない風潮に一石を投じたなど、活発に意見が交わされた。
作者からは、職場で起ち上がる困難にどう向き合うかの葛藤は自分になかったもので、その自己批評が弱かったため咲の印象も薄まったように思うとの発言があった。
「通訳」について報告者風見梢太郎氏は、レジュメに従い、キューバ特にその医療制度への思いに溢れた作品であり、旅行記でなく小説として描いた努力と工夫は評価できる、余り書かれなくなった世界青年学生祭典を取り入れ、キューバのナショナルチームとの柔道練習の場面など生き生きと臨場感ある描写は優れていると評しながら、タイトルにもある通訳の女性アレイダとの交友・愛は、読者が男女のそれに敏感なだけに、もう少し書き込みが必要だった、また散見される感情の直接的表現は抑えた書き方をする方が共感を増すと指摘した。
討論では、キューバは遠い存在であり知識も乏しいため新鮮に感じられたと若い参加者が共通に述べたほか、医療制度をはじめ国の実情がよく分かった、緊迫した柔道練習場面の活写、繰り返し投げられても立ち向かって行く姿にアレイダの視線が変って行く様子に心打たれたなどの意見の一方、アレイダの印象が薄く、それはキューバそのものではないかとの指摘も出された。
作者からは、たしかにアレイダは作品世界を旅行記から脹らませるための創作上の設定だったので、印象が薄くなりもう少し工夫が必要だったとの発言があった。
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