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一月二十九日(金)は吉開那津子作「懐かしの小径」、鶴岡征雄作「火の岬」、浅尾大輔作「支部の人びと」を取り上げて行われた。三作者を含め、参加者は十四人。スカイプで浅尾さんは参加された。司会は牛久保建男氏。
「懐かしの小径」は柏木和子氏が作品のイメージと内容のとらえ方、作者の意図などを報告した。冒頭の香坂家のスカーフの縁かがりの内職をする女性の懸命に生き抜く姿や長井家の家族離散の悲劇を通して、占領下の日本の風潮を象徴する描き方をしていることを指摘された。また参加者から、小学校三年の早苗の目線で描かれている情景や心情の描写は作品を奥深くし、読者を引きつける源になっているし、書かれていないこともイメージで広がりを生み出す構成は深みのあるものであるという感想が出された。また作者からは、戦後の日本では貧困にあえぎながらも女性たちが支えた、そうしたところから出発したという、現代にもつながるテーマとして書こうとしたと話された。
「火の岬」は仙洞田一彦氏が報告した。七十五歳で妻を失った男の孤独との戦いを描いたもので散骨をしようと鹿児島の坊津に来たのだが、肝心の散骨がどうなったのかが書かれていないのが物足りないと話された。参加者からも散骨と画家としてのこれまでの人生への思いがうまく絡み合っていないようだとも述べられた。旅で出会った人との交流は生き生きと描かれているので、人生をやり直したいというような明るい結末にも感じられるという意見もあった。
「支部の人びと」は今までの小説の形を少し脱したものとして書かれていると北村氏から報告があった。断片的な事実が続き、二宮ハルミの描き方に硬さがみられるという指摘もあった。参加者からは共産党の支部の厳しい現実やハルミの如何ともしがたい苦悩をつつきだしながら、党支部の矛盾を懸命に描き出そうとした異色の作品であり、その努力に敬意を表したいという意見もあった。またハルミの離婚問題では元夫と向き合わなければ解決できない問題がありながら党支部の活動にのめりこむ姿は息苦しいのではないか、子どもの雲雀が心配だという感想もあった。
今の時代にハルミのような活動家を支え、ともに生きる支部のあり方を模索する内容に果敢に挑戦した浅尾さんの努力には期待したいという声もあった。
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