「作者と読者の会」 2015年7月号 


 
 六月二十六日午後六時より文学会事務所で、仙洞田一彦「久しぶりの話」と荒木雅子「モクレン通り」を取り上げて行われた。参加者は十五名。司会は宮本阿伎氏。
 始めに櫂悦子氏にパワーポイントを使いながら、「久しぶりの話」から学ぶことを印象的に鋭い感性で提起してもらった。櫂氏はテーマが一つに絞られて、小説の一要素の「叙述、説明」の大切さについて強調された。阿波野、荻村、柳を登場させ、三人三様の人生のストーリイを描写と会話を効果的に使いながら、それぞれが抱えているものを読者に垣間見せながら、進行していることと描写と会話だけでは表現しきれないものを叙述と説明で補うということを作者はよく理解してつきだしていると述べた。課長職の打診で揺らぐ荻村の心情、それを通して資本の側がどう全体を掌握して行こうとしているのかも伝わってくる。
 参加者のなかで、改めて労働者の頑張りが際立った作品であるという指摘や揺れても踏みとどまろうとするモチーフが共感できたと意見が出された。
 「モクレン通り」では風見梢太郎氏が障害児教育の内容が反映されている大切な作品としたうえで、主人公の動きや目線の動きなどに、自然さが加わると読者を引き込む様になるという報告をされた。また文章表現に感性の良さが感じられると指摘された。
参加者からは奈緒が障害児教育に関わるようになったきっかけがダウン症のケンちゃんであることが書かれていて、実際の伸吾や圭介の織りなす出来事を語るうえでより深みを増しているという指摘があった。健常児と障害児の問題に絡む今日の課題はこの作品がつつきだしているように重いが、この作品で改めて再認識することができてよかったとまとめられた。
     
 (北嶋節子) 
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