「作者と読者の会」 2015年5月号 


 
 四月二十四日の「作者と読者の会」は、竹之内宏悠作「柵」と栗木絵美作「六年生の自画像」を取り上げて行われた。司会は乙部宗徳氏で参加者は十八名だった。
 初めに「柵」について松井活氏が、久しぶりに労働戦線の迫力ある作品に出合えた、合同労組の特徴が出ている、一つ一つのケースの叙述も具体的だ、非正規の悲惨な現状に対し、主人公の決意が胸に響き、読者に希望を与える、だがタイトルについては疑問、「柵」がなぜ生じているのか根源を把握し、背景に筆がほしかったとの報告をした。討論では、現代の貧困を如実に書いている、やりとりがユニーク、たたかいが素晴らしい、妻の思いも書いてほしい、小森の人物像が見えず解雇されるのもわからない、テーマにぶれがある、「柵」にあるのか活動の紹介にあるのか等の意見が出された。
 作者の竹之内氏は、「柵」は労働者側も作っている、労働運動の中で取り払わねばならない問題点をにおわせた、また「公益通報者保護法違反」を周知させたかったと述べた。
 「六年生の自画像」については宮本阿伎氏が、大事件が起こるわけではないが起承転結がはっきりしており、意外性もある、主人公の教師としての謙虚さ、真摯さ、曇りのない目がよく、感動した、季節の移ろいの濃やかさ、人物も描かれている、描きたいことが作者の眼によく見えているのを評価したいと報告した。討論では、主人公がゆかりにどう関わったのか具体的に見えず説明的だ、父親像が描かれていない、ゆかりのとらえどころのない性格が興味深い、ゆかりは今後どうなっていくのか不安という意見に対し、ゆかりは黙っているが自分を持っている子どもではないか、休まず学校に通ったのはすごいという意見も出された。また、爽やかで感動した、作者の目のつけどころ、確かさ、優しさを感じたとの感想も出された。
 作者の栗木氏は、真面目に一生懸命やっているが、うまくいかない教師を描きたかったと述べ、今日の討論を次作に生かしたいと話した。
      
 (三原和枝) 
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