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三月一日(日)午後一時から文学会事務所で、民主文学三月号に掲載された作品の中から四作品を対象にした「作者と読者の会」が開催された。雨もよいの日曜午後だった。
松本たき子「ママ友は自衛官」の報告者岩渕剛氏は、舞台になっている横須賀を紹介された上で、迷彩服で保育園に現れるママに違和感を感じる憲子を主人公にした、ユニークな作品であり、着眼点がよいと講評された。作者の松本氏は「自分にしかかけないことは何か」と自問し、「横須賀に住み、暮らす若者」の視点で描こうと思ったと発言された。
石井斉「妻と星空」を報告された須藤みゆき氏は、手書きのレジュメを用意された。仕事か家庭かがテーマになっており、主人公智はその答えを小説の中で出していないが、久美を抱きしめる場面は、その答えを暗示していると報告された。何作も同じことが描かれている、久美の形象がわかりにくい、など厳しい意見があったなか、作者が描きたいことがまだあるのではないか、今回その一つが描かれたと思うとの意見も出された。作者が欠席されたことは残念だった。
浅野尚孝「きみのとまり木」は、報告者が岩渕氏に戻り、三十八歳の元幸が仕事に誇りを持って打ち込めない中、闇をかかえている奈波を支えていくことが出来るのか、男だから支えなくてはならないのか、自分の立ち位置がつかめていないのではないかと指摘された。恋愛小説として読んだ、女性のキャラクターがハッキリしない、などの意見がだされた。作者の浅野氏は、元幸と奈波が恋愛に不器用だということを描きたかったが、思い通りにならなかったと発言された。
東喜啓「蘇鉄のある家」は、須藤氏にバトンが戻り、レジュメに沿っての報告だった。リアルタイムの舞台がすべて食事部屋に設定され、作品に温かさを与えており、家族の大切さを描いた作品だと指摘された。高校入学の話だけで十分であり、基地問題は詰め込みすぎではないかとの意見が出たが、作者の東氏は、基地の話が持ち上がったことがこの作品を描くきっかけだったと発言された。
乙部宗徳氏の司会で進められ、参加者は十一人だった。
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