「作者と読者の会」 2014年3月号 



 二月二十八日(金)、十三名の参加で三月号の相沢一郎「寒風に抗して」と青木資二「ローアンの風」を合評した。司会は乙部宗徳氏。
 「寒風に抗して」は、報告者の工藤勢津子氏が、「作品が二〇一二年大阪の橋下市長による市職員へのアンケート調査に対する怒りがモチーフになっていること、思想信条の自由を守ることの大切さ、困難な中で労働者の闘いを描こうと、重く大きなテーマに挑戦していることは評価されるが、一方主人公越智の闘いの意志のよってくるところは何なのか」「連帯がない」「終り方に問題はないか」など、疑問点も出された。
 この日、神戸から参加された作者が「この事態はどうしても知ってほしかったので書いた。何度も手を加えた」と、作品と文学への思いの強さを語っていたのが印象的だった。編集との書き直しの裏話を聞くことができるのも、この「会」ならではのことで実作者としては得るところが多かった。
 「ローアンの風」については、山形暁子氏がストーリーと構成の詳しい分析のあと、「今日の教育現場の長時間過密労働の下、主人公香澄は、先輩教師の落合との異性関係に悩みながらも、自分たちの職場を変えていくためには、みんなで話し合って協力しながら行動していくことしかないという認識に至る。小説でしか描けない世界が構築されている。作者の創作への意欲と挑戦に拍手を送りたい」と報告された。
 作者は都合で欠席されたが、編集から最初は百三十四枚だったものから書き直されたことなど、成立過程も話された。討論では、笹岡がスーパーマン過ぎるが、それは闘いの過程が描かれていないからではないか、落合とのことは不要ではないか、予定調和的ですべて解決されるのはいかがか、などの意見が出された。
    
 (坂井実三) 
「作者と読者の会」に戻る