「作者と読者の会」 2013年7月号 


 
 六月二十八日午後六時より八時十分まで文学会事務所で、司会の乙部宗徳氏を含め十四名が参加。芝田敏之「人気投票」を予定の久野通広氏に代わって仙洞田一彦氏が、小宮次郎「虹の橋」を宮本阿伎氏が報告した。
 「人気投票」では「客の吉田がわからない。レジ係と店長が対立の軸だ。売り上げ至上主義に悩み働かされるレジ係の、ポスターへの反応や、署名集めの場面を書くと立体的になる」と報告があった。
 討論では、「吉田は登場しなくてよい」「店長の杉山を徹底して追うべき」と「吉田は不可欠。重要発言をする」に分かれた。「橋下発言に対して吉田が『ご機嫌取り』というのは、生徒・保護者の軽視を助長しないか」と心配する意見もあった。二視点についても「面白い。試すべき」と「話が重複する」に評価が分かれた。店長の杉山については「苦悩してない」「葛藤しない」と「こんな人もいる」「今を反映している」に分かれた。作者は、スーパーの人気投票に抗議した客が店員に感謝された内容の投書に、感銘して書いたと話した。
 「虹の橋」では「書き出しがよい。書きたいことが凝縮されている。課題は①いつの話かわからない、②銀行の業務内容が書かれていない、③言葉が不正確、文章が不鮮明、人物描写が不十分な箇所がある。『筋書き小説』になった。親しいので厳しく見たが」と報告された。
 討論では「正規とパートの矛盾を乗り越え団結したのを書いたのがすごい」「中間管理職が変わったところがよい」「銀行の内部がわかった」「今の自分が直面している問題が全部書かれていてなるほどと思った」と評価された。反面、「読者にわからない表現が多い」「正規とパートをまとめた紆余曲折をもっと書いてほしい」「共産党員の夫がスーパーマンのようだ。極度な警戒やスパイまでして管理する実態もあるが、描写不足」の指摘があった。作者は、九一年に一人増員できた体験を描いた。かなり直したが、まだ不十分と述べた。
 
(栗木絵美) 
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