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五月三十一日午後六時より、文学会事務所で十三名の参加で開催された。司会は乙部宗徳氏。岡山から駆けつけてくれた笹本敦史さんの第十回民主文学新人賞受賞作「ユニオン!」を田島一氏が、同佳作受賞作・永澤滉さんの「霧の中の工場」を岩渕剛氏がそれぞれ報告した。
「ユニオン!」について田島氏は、全員に配布した選考委員の選評や資料をもとに、「選考委員の評価が割れなかったのは作品が良かったからだ」と評し、①一般文芸誌で書かれていない世界を描いた新鮮さがある。②労働現場を描き出した秀逸な作品。③現代の若者たちの抱える苦難を抑制した筆致で描いた。④能動的に生きようとする青年群像を造形した。これができたのは作者のモチーフの深さが根にあるからだ、と報告した。
参加者からは「会話、文章、流れが軽快で躍動感がある」「団交の場で、この職場が好きだと言った場面がよい」「労働組合を描いた小説として新しいものがでてきた」などの感想があり、笹本氏は「生協の職場を理解してもらうために最初の場面は長くした。何回も読み直し、感覚的に変えていき、六ヶ月くらいかかった。受賞第一作は、生協労組の側を深く描きたい」と抱負を語った。
「霧の中の工場」について岩渕氏はわかりやすくあらすじを述べた後、「小さい企業が大きな企業に呑み込まれていく。技術力があっても資本に潰されている。そしてこの町自体が活気を失い疲弊している。組合を作る話よりも、中小企業の潰れていくさみしさ、新自由主義が横行する現実が表に出ている印象を持った。ストーリー展開とシチュエーションはよく分かるが、その中で生きていく人間関係をもう少し描いてほしかった」
参加者からは、「社長の行く末はどうなるのか。構成がしっかりしている」「説得力のある描写が続いて分かりやすい」「ほっとする感覚で読んだ。人間の魅力、イメージが読み手に伝わってくる」「疲弊していく町の様子、雰囲気がでている小説」などの感想が出され、永澤さんは、「古い時代を現代で描いた。組合作りの話ではなく、紀夫の成長を描きたかった。薄幸な主人公がより広い世界で生きていくような。五、六年前ここの文学教室で学びました」と語った。両作品とも青年の労働現場を描いた作品。来年の新人賞作品が待ち遠しい。
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