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一月二十五日(金)午後六時より、文学会事務所で開催。山形暁子「耕ちゃんダンス」(一月号)を宮本阿伎氏が、吉開那津子「ハルハ河遠望」(二月号)を丹羽郁生氏が報告した。司会は乙部宗徳氏。参加者十二名。
「耕ちゃんダンス」について、宮本氏は孫の病状に留まらず、放射能汚染を心配する現代の課題にも触れ、独居する主人公の心情もさりげなく描写し、小説的だと評した。孫の発育が遅れ気を揉む心情を取り上げた作品は、素材としても新しさを感じ、文章も切れ味がよく、端正で分かりやすい。娘に「助けてほしい時は自分を呼んで」と語ることばは印象的で、前の世代と違う感じを受ける。松の木が枯れるのも、子どもの生命力と対比させていて意欲的な描写だが、もの足りなさもある。
討論では「読みやすく面白く読んだ」「孫を心配する心情がよく伝わってくる」「涙が出た」「松の木はカットしてもいいと思われたが、3・11から〈いのち〉を考えると、主人公の姿勢と重なる気がした」「書き慣れているが、日常生活の表面を追っていて、小説としての〈普遍的意義〉が浅いのではないか」「何を描こうとしたのか」などの意見が出た。
作者は松の木が何故枯れるのか、〈命の連鎖〉を考え、ステロイドを安易に使う医療への告発、娘への励ましなどで描いた。タイトルは希望を託したい思いで付けた、と語った。
「ハルハ河遠望」で丹羽氏は、旅行記のような表面をなぞったものと違って、極めて小説的であると評した。会話が主体で分かりやすい描写、現地の人と親しくなっていく場面、登場人物も絞られ、行った先の随処が丁寧に描写されていて、読者を飽きさせない。歴史を遡って真実を明らかにしている。読者が主人公と一緒に小説の中を歩み、隠蔽されていて知らなかった事実が次々分かり、楽しく読めた。もっと知りたいという欲求が残った。
討論では、「玉蜀黍畑など、一緒に旅をしているように場面が浮かんでくる描写が心に残る」「合評で〈説明が多い〉と指摘されることがあるが、この作品は会話で描写しているところが面白い」「人間を描く書き方もいろいろあるが、会話を通して心情を多面的に描くのもいい」「〈田中上奏文〉など隠された歴史について、読者として面白く読めた」「小説の中で知ったことがたくさんあった」「虚構の世界に全く騙されてしまった」「こういうのが小説なんだと、感動的に読めた」などの意見が出た。
作者は小説的真実で事実ではないと説明。主人公の内面を描写するため〈私〉と書いた。ノモンハンだけでなく、太平洋戦争も調べた。戦争が何のために行われたのか、信じた兵士の思いを小説で描きたかったと述べた。
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