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十二月一日(土)、支部誌同人誌推薦作入選作の島田たろう「原発の空の下」、高田力「部屋に灯かりが」、荒木雅子「六月の庭」をテーマに、乙部宗徳氏の司会で九名が参加して行われた。報告はいずれも新船海三郎氏。
「原発の空の下」について新船氏は、藤林和子の同名の小説を基に、原発で働くことで人生を狂わされていく青年が、それを自然災害のようには受け入れず原発を告発していこうとする姿を通じて、立地周辺で原発が日常生活に深く侵入している事実を、拳を振り上げない淡彩の色調で描いた重いテーマの戯曲であり、まとまりのあるよい仕上がりになっていると評した。その上で、原作への遠慮ゆえか、主人公拓也の原発労働の危険性等への気づきが緩慢で、結末も印象が薄い点が、三・一一後の原発問題への理解としてはやや物足りなく感じられると指摘した。
討論では、暗転の多用や独白が作劇上やや気になる、放射性廃棄物処理や被曝労働、多重下請問題の描写に原作と劇化した本作との力を感じたが、今日的には〝原子力ムラ〟などに触れるとよかった、という意見が出た。
次に、「部屋に灯かりが」について新船氏は、子ども好きだが上昇志向はない平三と、土地柄からか持家にこだわり上昇志向が強い武子という夫婦の、ともに貧しい庶民の二極分解を背景に、平三がパチンコ依存症に陥り回復するまでの夫婦の葛藤をほのぼのと描いた作品であり、登場人物が人生に深刻にならずに事態の展開を追う形の作品だと評した。
討論では、夫婦の対照的な姿や結末の温かさがよかったとする一方で、パチンコ依存症や、サラ金地獄に陥る描写にリアリティが不足している、二人が縒りを戻す過程が取って付けた感じがするなどの意見も出された。
最後に「六月の庭」について新船氏は、二十年余り障害児施設に勤めて退職した晶子の、その送別会の日に脳梗塞で倒れた離れて暮す父とのやり取りを通じて、昔の父の姿を思い「もっとしっかりしてほしい」とも思う娘の心理がよく描かれた秀作だと評した。その上で、思わず父を傷つけた言葉に自らを責める部分の記述は弁解的で情趣を殺ぐと指摘した。
討論では、自然で淡々とした、繊細な文章の美しさが共通していわれた他、会話の文章で成り立たせている巧みさ、場面の作り方の巧みさなどが指摘された。
作者から、障害児施設に長く勤めていたにも拘らず持ってしまった「父に対するまなざし」と葛藤を書きたかったが、まだ体験から抜け出た創作となっていないように思う、とのコメントがあった。
終了後、新人を励ます集いが行われた。
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