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十月二十六日午後六時半から文学会事務所で九名の参加で開催。十一月号の能島龍三「裾野便り」を風見梢太郎氏が、塚原理恵「コンチネンス」を澤田章子氏がそれぞれ報告した。司会は乙部宗徳氏。
風見氏は「裾野便り」は、長編「夏雲」と「風の地平」を繋ぐ作品で、能島龍三という作家を知る上で欠かせない作品と位置づけた。七〇年代の青春のモニュメントを真摯に見つめ、人生に取り組む真剣さを正面から描いてよい作品である。大学の先輩で当時指導的な役割を果たしていた白井への「心酔」、結果として藤田夫婦は翻弄されるが、その時期を経て、党に復帰する過程がサラリと書かれているが、分析の対象として重要ではないか。個人崇拝の危うさ、人間の複雑さが描かれ、「自分の頭で考えることの大切さ」を提示していると報告された。
討論では、感銘深い良い作品で、安保闘争直後に学生時代を過ごしたが、白井のような人物がいたことを思い出した。原発問題による時代の変化を作品全体の中で作者は感じ取っている。藤田と宮之原の関係で何が問題だったのか、白井の何が変なのか追求してほしかった、など出された。
能島氏は、放射能の高い群馬に住む旧友から手紙を受け取って、いまこれを書いておかないと前に進めないと思い書いた。この中の部分を深め、書こうと思っていると述べた。
澤田氏は「コンチネンス」(排泄のコントロールがついている状態と表題を説明)について、さすが看護師経験者の作家の作品、テーマは出産時の性器脱による尿もれに悩み、羞恥と性生活への不安から、夫に打ち明けられずにいる女性の苦悩の日々が描き出されている。その回復のために働くコンチネンスナースの存在を通して、人としての尊厳を尊ぶ生き方を模索した作品である。文学的には美怜の心の問題が、浅いところに止まっている。夫婦の在り方を具体的に描くことで、深められたのではないかと報告された。
討論では、女性の特性を新鮮な感じで読んだ、大切な作品だ、男性優位の考え方が美怜の中にあり苦しんでいるが、夫政幸と結びついていない、このような題材が小説になるのだ、など出された。
塚原氏は、性の問題は目立たないがいくらもある、小説にする難しさを感じる。病気だからきちんと治療し、諦めてはいけないことを訴えたかったとのべた。
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