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十二月三日(土)、支部誌・同人誌推薦作品優秀作の梅崎萌子「時雨沼」、入選作の澄田恭一「川田家断絶始末」、同青山次郎「上野にて」をテーマに、十二名が参加して行われた。
報告者真木和泉氏は簡明なレジュメをもとに三作品について報告した。
梅崎萌子「時雨沼」については、過去の記憶と目前の現実とが一幅の絵画を紡ぎ出すようにしっとりとした文体で巧みに描写され、筆力が感じられる、「時雨沼の仙人」に誰を重ねるかについて「わたし」と「尾田さん」の思いを併置して作品世界に客観性が与えられ、味わい深い印象となっていると報告した。
その上で、作品に登場する「わたし」の家庭への接し方が今後どのように変化するかの示唆がほしかった、「大学の民主化」という言葉が説明不足のため、自治会活動をめぐる「わたし」の葛藤が読者に伝わりにくいのではないか、などの指摘があった。
討論では、時雨沼の描写について共通に好印象が述べられる一方、「仁部さん」と「時雨沼の仙人」とを結びつける描写がもう少しほしかったなどの感想も述べられた。
作者梅崎氏からは、作品に具体名を入れる点には相当細かく気を遣った、場面の転換を「雲の陰り」「尾田さんの帽子」の描写で工夫してみたなどの創作談が披露された。
澄田恭一「川田家断絶始末」について、真木氏は作品を各節ごとに見ながら、陽明学から朱子学への藩学転換に対し脱藩→絶家という強烈な方法を貫く川田復治郎の抗議の意思が徐徐に明るみに出る様が、感傷を排した引き締まった文体を最後まで維持して描写され崇敬の念さえ感じる、またその抗議さえ一瞬の波紋に止まる非情な余韻が残ると報告した。
討論では、民主文学では異例かつ本格的な歴史小説への感嘆の念の一方で、朱子学の官学化や寛政異学の禁などの時代背景は読者のためにもう少し説明がほしかった、ハイライトである復治郎の上申書の表記はくだけ過ぎなのではないか、などの感想も出された。
青山次郎「上野にて」について真木氏は、全動労組合員の二十三年にわたる苦難のたたかいを描いた民主文学でも数少ない作品ではないか、国鉄の組合員に非同情的な社会状況の中で「よく闘ったなぁ」というねぎらいの気持ちが読後感を満たす作品だと指摘した。
その上で、作品世界が二十年と長すぎ、そのためか登場人物の年齢が結像しにくい、進路調査で父の職業欄を空白にする息子をめぐる描写では、全動労組合員がなぜ差別されるかに説得不足を感じる、などの指摘があった。
討論では、作者の人柄が滲み出ており、ひたむきな創作姿勢・強いモチーフの大切さを感じた、第一作で経験と無関係の題材でここまで書いたことに驚いた、もう少し家族の葛藤が描ければよかったなどの感想が出された。
青山氏から、文学教室などに通いながら何度も書き直したが、切迫感がまだ足りない感じで、ステレオタイプの表現とともに課題だと思う、家族の葛藤を十分描けなかったのは、取材の限界もあったとのコメントがあった。
終了後、入選者を囲む集いが開かれた。
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