「作者と読者の会」 2009年9月号 



  八月二十八日の「作者と読者の会」には、作者を含め十八名が参加した。山形暁子氏が司会をし、秋谷徹雄「ツインズ古希」について、平瀬誠一氏が「しがない年金暮らしの二人の老人と、周囲の人々とのユニークな交流をユーモラスに描き、連帯感を訴えた作品だが、最初は作者の意図が読み取れなかった。描き方には少し疑問を感じた」と報告。「民主文学では異色」「風刺が効いて面白かった」「明るくすがすがしい」「さわやかな読後感」「色んなことを詰め込み過ぎ」「お酒を飲むことでしか、連帯できないのか」「日本の老人は貧しい」「実験的な作品」「高校生の描写はリアリティがない」などの意見が出た。また、「えひめ丸を小説にして紹介してくれて嬉しい」との意見もあった。作者は、「老人はこれからどう生きていくかを常に考えている。えひめ丸については、短編小説では紹介しきれない。文献にあたってほしい。つくった作品でリアリティは二の次」と述べた。
 石井斉「屋根の上の隣人」について、旭爪あかね氏が「作者は、本誌昨年九月号『働きたい理由』、同十二月号『妻と岩魚』、本作品のほか、最近の支部誌にも同一テーマで連作していて、着実に文章修行が進んでいる。家族の確かな愛情が感動を呼び、読者は作品によって、希望と共感を読み取れる。簡潔な短い文が、つなぎ目なく重ねられ、内容にマッチしている。『磊落』『氷菓子』『嚥下』などの用語が気になる」と報告。「登場人物がムダなく、描かれている」「テレビの映り具合が、伏線としてだけでなく、最後にうまくつながっている」「描写が的確」など評価する意見が続いた。一方、文体については賛否の意見が別れた。「読みづらい」「文体は意識して書くものではない」「文体は結果として出てくるもの」などの批判もあった。「自閉症の症状について、作品の描写では誤解を招く。作者はもっと研究すべきだ」という意見もあった。作者は、「批評を受けることは非常にありがたい。文体については、これでいいとは思っていない。書いて出来上がっていくものだと思っている。自閉症については、知識不足もあった」と述べた。
 山形氏は「どちらも作者の創作意図が良く伝わって、おおむね好評でした」とまとめた。
(林 計男) 
「作者と読者の会」に戻る