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四月二十五日の作者と読者の会は、民主文学三月から五月までの短期集中連載、田島一作の「ハンドシェイク回路」の合評だった。司会は旭爪あかね氏。二十四名の参加者の中に作者の友人、石川島播磨のOBや日立から三名が出席、企業で働く人々の生の声が討論の内容をいっそう豊かにした。
報告者の小林昭氏は「平明で理解しやすく、民主文学に新しいものをつけ加えた優れた作品」と全体を評価した。専門的な技術用語はむずかしいが、家族など普通の人物を描きスケールの大きい小説。大企業五万人のN工場で三十数年、思想差別をされた主人公沖元が和解を勝ち取り開発プロジェクトの仕事につく。「森を見て木が見える」つまり会社の構図全体の中で人間の生きる日常の姿を描いている。さらにいいと思ったことは、人物を善玉悪玉として描いていない。主な登場人物の上司の磯部、若手技師の立川、派遣労働者のさやか、沖元の妻や息子の描き方を説明し、今の時代に、どのようにして人間らしさを取り戻すかの問いかけがこの小説だと思うと述べた。
参加者から、読みごたえのある作品、登場人物の心理描写がうまくよくわかる。感心した所は、第二章の七で長い間差別をされていたために技術者としての実力の低下に気づき悩み、先輩に励まされ元気づけられる所や、女性や労働者の立居振舞がすっきりと立派に描かれている。きょう、東芝の和解のことが報道された。この作品は『湾の篝火』の続編のような感じを持った。骨太い小説、ぜひ単行本にしてほしい。力作で構成もうまい。登場人物の個性がよくわかる。人物の描き方が説明的でなく人間が動いている。石播とN工場と共通点があり励まされた。後継者づくりが大切と思った。立川がロボットへの夢を語りながら、イラクでの戦争で大量に人殺しをしているアメリカのやり方を見抜いている。沖元は、技術への倫理観を持つ若者の存在を嬉しく思うという場面もよかった。等々の意見の一方で、沖元に味つけをしマイナス面もあっていいのではないか。たとえば複雑ないじめが出てくると沖元のキャラクターがもっと深められると思う。労組は会社の成果主義いいなりでしょうがない組合であるが、もうすこし労組のことも書いてほしい、といった意見も出された。
また、ハッピーエンド的に終わっている最後はどうかなど発言が続く中で終わりの時間がきてしまった。
田島一氏は、いくつかの質問に答えたあと「次作へのモチーフを掻き立てられた。普通の人と一緒に仕事をしたいとの思いから熾烈な闘いをしてきたと思う」と発言。熱気に満ちた会であった。 |
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