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十二月六日、二十一人の参加で、恒例の支部誌・同人誌推薦作品から、四作品が取り上げられた。作者は全員出席。司会は丹羽郁生編集長。澤田章子氏が税所史子作「石工」と石井斉作「妻と岩魚」を、山形暁子氏が大窪輝子作「喪主になった少女」と佐和宏子作「山を望む町」を報告された。
「石工」について澤田氏は、源という珪肺病の父親と母のいない六人の子どもの家族の情愛が、源に寄りそって描かれ、読後感爽やかな作品である。一九六一年の時代背景と労災認定を受ける経緯が統一的に捉えられていると、一層よいものになった。さらに職人気質の源が、権利に目覚めて、新しい生き方をするようになった変化への、屈辱や抵抗などが描き込まれるとよかったと指摘された。意見交換では曖昧な表現がある、源の変化に影響を与えた笹本の姿が少ないのは惜しいなど出された。作者税所さんは主体性を持って、指摘された意見を今後に生かしたいと語った。
「妻と岩魚」は、二人とも病気の若い夫婦の話。短い文体に特徴があり、貧しい、冷たい、寒い、という作品世界だが、読後感には温かで豊かな詩情が残る。「僕」の妻・久美を思う心が主観的で、どのような愛なのか、なぜいとしいのか、例えば元気なときの久美の姿があると、二人の病気の背景が見え深まったのではと述べられた。参加者の中では、岩魚と狸の夫婦をめぐって議論になり、みなの笑いと小説の妙味に触れた。作者石井さんは自分の作品が選ばれたことに感動している、貴重な意見がもらえ勉強になったと語った。
「喪主になった少女」について山形氏は、南朝鮮の地で母、兄、二人の姉を喪い、その都度野辺送りの先頭に立たなければならなかった少女の深い悲しみを描いた作品からは、戦争さえなければという心の叫びとともに、生き抜こうとする強い覚悟も伝わってくる。息詰まるような姉の臨終の場面、火葬場での骨拾いの場面など、心象を重ねた情景描写のよさを強調された。意見として、書きにくい題材をよくぞ書いてくれた、舞台である朝鮮の特徴がほしい、などであった。作者大窪さんは、書かずにはいられない気持ちを、折に触れ書き溜めてきた。入選して、生きてきてよかったと感激を語った。
「山を望む町」では、山形氏は作品から触発されたあふれ出る心を交えつつ、義母の納骨場面で、離婚した義父母のたどった道と三人の子どもの両親への思いを、息子の連れ合いである佐恵子の視点で描かれていく。その目配りのある端整な筆遣いに感じ入った。美代子の自立して生きる女性像にも共感した。欲をいえばテーマをしぼるというところで整理されるとよいのではないかと指摘された。作者佐和さんは、第33期文学教室で、元気だった義母を主人公に「蘭」という作品を書いた。それ以来義母を書きたいと思いつづけてきたと創作への意欲を語った。
終了後、三十人で「入選者を囲む集い」が開かれ、山形氏のサムエル・ウルマンの詩「青春とは」(「山を望む町」に引用されている)の朗読をはじめ、四人の作者への熱いエールが送られた。
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